熊本市電、29日から減便 運行本数1割減少 車両故障、乗務員不足で
熊本市交通局は20日、市電の減便に伴うダイヤ改正を29日から実施すると、市議会都市整備委員会に報告した。想定外の車両故障や乗務員不足を理由に挙げており、ダイヤ改正は昨年11月以来。運行本数の削減幅は1割強に上り、過去最大規模という。
交通局によると、A系統(田崎橋・熊本駅-健軍町)とB系統(上熊本-健軍町)の上下線について、平日は現行の433本を369本に減らす。減便率は15%。土曜は437本から376本に、日曜祝日は432本から374本とする。減便率は14%と13%。
昨年11月の減便は土日祝日が中心だったが、今回は平日を含む全体に対象を広げた。平日朝のラッシュ時(午前7時半~8時半)も主要電停の健軍町で2便、新水前寺駅前で4便、熊本駅前で2便、それぞれ減ることになる。
市電の車両は老朽化が目立ち、1日平均で2台の故障・事故が発生している。「車両数に余裕のない状態が続いている」と交通局の担当者。ダイヤ改正後は、平日朝の車両の最大出庫台数を33台から31台に削減する。
運転士と車掌の人数は昨年4月の101人から今年4月には83人に減った。介護、子育てを理由とした退職のほか、病気休職も相次いだという。今回の改正では最終便を最大42分繰り上げ、乗務員の労働環境の改善を図る。
市は本年度、乗務員不足を補うために10人を新たに採用した。教習を経て乗務が可能になる来年度は、状況の改善を見込んでいる。
井芹和哉・交通事業管理者は「今のダイヤを維持するのは難しく、減便という苦渋の決断をせざるを得ない。状況を改善させ、利便性の高い市電の運行に戻したい」と話している。
新しい時刻表は市交通局のホームページで公開しており、今後、各電停にも掲示する。(臼杵大介)
「時間通りに乗れなくなるかも」…細る地域の足、利用者から懸念の声
熊本市電が29日から減便されることになり、学生や高齢の利用者からは貴重な公共交通の「足」が細っていくことを懸念する声が上がった。
第一高2年の中野花映さん=合志市=は、雨の日の通学で市電を利用する。「朝夕のラッシュ時に乗客が増え、時間通りに乗れなくなるかもしれない」と不安を口にした。
熊本市中央区の竹原繁子さん(75)も「市電の利用頻度が多い高齢者には影響がある。運行時間を今よりも気にする人は増えるだろう」と話した。
市交通局にとって、減便は避けたい選択だ。だが、今年に入って、ドアが開いたままの走行や、赤信号の確認を怠るといったミスが相次ぐ。その要因の一つとして、慢性的な乗務員不足も指摘されている。今回のダイヤ改正の背景には、そんな事情もある。
運転士の確保は進んでおらず、ダイヤを前回改正した昨年11月と比べて6人減った。非正規の会計年度任用職員という身分の不安定さも影響しているという。
労働環境の悪化も深刻だ。昨年4月に約15時間だった乗務員の残業時間は、今年3月には約30時間と倍に増えた。市交通局は「減便によって、乗務員への十分な指導時間を確保し、安全性の向上につなげたい」としている。(臼杵大介、上村彩綾)
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