宇土中・高「ウトウトタイム」導入10年 昼寝10分、授業中の居眠り減少 睡眠への意識変化も
熊本県立宇土中・高(宇土市)で昼休み後、10分間だけ昼寝をする「ウトウトタイム」を導入して10年。授業中に居眠りの回数が減少したり、自主的に睡眠をテーマに課題研究に取り組んだりと良い効果が出ている。横川修校長は「生徒の中で睡眠が大事だという意識が生まれている」と手応えを語る。
「まもなくウトウトタイムが始まります」。6月中旬、午後1時17分に放送が流れると、宇土高1年1組の教室では担当の生徒が教室のカーテンを閉めて消灯した。それぞれの机に顔を伏せて眠り始める生徒たち。約10分後「おはようございます。掃除の時間です」と、目覚ましの放送でウトウトタイムが終了。生徒らは幾分すっきりした表情で掃除に取りかかった。
宇土中・高は文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに指定された2013年から、筑波大国際統合睡眠医科学研究機構(茨城県)と連携。睡眠研究の世界的権威である柳沢正史機構長らにアドバイスを受けながら、14年度に試験的に昼寝を実施したところ、85・5%の生徒が「導入したい」と答え、「集中力の上昇に効果がみられた」と感じた生徒は39・4%に上った。
15年度から本格的にウトウトタイムがスタートしたものの、校内では「寝る間を惜しんで勉強する」といった考え方も根強かったという。「睡眠の重要性を理解してもらうのは大変だった」と後藤裕市教諭。講演会などを通じ、睡眠の重要性を生徒に訴え続けた。
10年を経て、生徒にも変化が表れてきた。14年度のアンケートでは、56・7%の生徒が「学校で眠気におそわれる時間帯」に5時間目を選んだが、23年度は「5~6時間目に居眠りをする」と答えた生徒は、高校で39%、中学で24%にとどまった。
宇土高ではより科学的に睡眠について検証するため、「カフェイン摂取と睡眠の影響」「ウトウトタイムで作業効率は上がるのか」など、課題研究のテーマに取り上げる生徒も出てきた。
3年の岡田淳平さんらのグループは23年度から、自転車利用と睡眠の質との関係について調査。自転車で通学した場合と徒歩とバスを利用した場合の2パターンで、夜間の睡眠時の脳波を測定した。その結果、自転車を利用した時は入眠までの時間が短く、まとまって深い睡眠を取れたことが分かった。岡田さんは「睡眠に関する研究は奥が深く難しいが、予想通りの結果を導き出せた」と満足そう。ウトウトタイムをきっかけに、筑波大の大学院に進学して睡眠に関する研究をする卒業生もいる。
後藤教諭は「生徒たちの睡眠に対する意識が変わり、午後の居眠りも減った。今後も外部の研究機関と連携しながら続けていきたい」と語る。(上野史央里)
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