パルプからウシの飼料を 日本製紙八代工場が量産へ 紙需要の減少見据え事業多角化
日本製紙(東京都)が、熊本県八代市十条町の八代工場で、パルプを使ったウシ用の飼料の量産化に取り組んでいる。同社は紙需要の減少を見据えた事業多角化の中で、10年以上前から飼料化を研究していた。八代工場を国内2カ所目の製造拠点とし、畜産が盛んな九州を中心に全国展開を目指す。
パルプは木のチップに熱や圧力、薬剤を加えて作る繊維で、主成分は牧草と同じセルロース。セルロースには消化を妨げるリグニンが結合しており、その除去が課題となる。日本製紙は紙用パルプの製造過程で、リグニンを除去した高純度セルロースを開発。消化効率が良く穀物並みの高い栄養がある。
2019年には農業・食品産業技術総合研究機構との実験で、乳用牛の乳質向上や乳量増の効果を確認。肉用牛の肥育農家では、枝肉重量の増加もみられたという。
宮城県の岩沼工場で試験製造・供与を続け、21年4月から「元気森森」の商品名で販売。23年度の生産は約2600トンで、24年5月現在、全国13カ所で利用されている。
25年度までの中期経営計画で「新規事業の戦力化加速」を打ち出しており、事業転換推進室は「パルプ飼料化は既存施設を活用できる。急な需要減への対応が難しい社有林の木材を使えるメリットがある」と説明。飼料の生産拡大を検討する中、畜産が盛んな九州で港や高速道路が近い八代工場を製造拠点に決めた。
22年秋から準備を始め、既に製造体制を確立。熊本、鹿児島、長崎3県の酪農家や肉用牛の繁殖、肥育農家に試験供与中で、現在は製品の梱包[こんぽう]手法などを検討している。
バイオマスマテリアル販売推進部は「国内の木材からパルプを作るため、輸入飼料に比べ国際情勢や為替に左右されないメリットもある。将来、収益の柱に育てたい」と話している。(河内正一郎)
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