江良水産(天草市) 雑節生産で「だし文化」下支え 新商品の開発も 【地元発・推しカンパニー】
![原料の仕入れ先の拡大などで売り上げを伸ばす江良水産の江良浩社長。だしの可能性を広めたいと意気込む=天草市](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-06/IP240604TAN000077000_01.jpg?itok=w4eEvzFl)
天草市久玉町の工場が近づくと、もくもくと立ちのぼる煙が目に入り、天草のまきでいぶした魚の香ばしい香りに包まれる。牛深地域が日本一の生産量を誇る「雑節」の加工を手がけ、調味料メーカーなどに出荷、全国の飲食店や業務用の調味料として使われている。日本の「だし文化」を下支えする存在だ。
雑節は、カツオ以外のサバやイワシ、ソウダガツオなどの節の総称。牛深地域は古くから水産加工業が盛んで、以前は約300件が軒を連ねたという。
4代目の江良浩社長(44)は元理学療法士。福岡市の病院に勤めていた2013年、3代目の父親が、原料となる魚の水揚げ量が不安定な状況が続いたことから「会社をたたむ」と言っているのを聞き、「家業を守る」とUターンした。17年、社長に就いた。
家業とはいえ、当初は手探り状態。「しけで水揚げがなく、2日しか操業できない月もあった」と振り返る。魚の確保に奔走し、父の代に九州で4カ所だった仕入れ先は13漁港に拡大。原料を冷凍保管するなどして、安定的な操業につなげていった。
販路拡大にも取り組み、24年7月期の売上高は、Uターンした13年(約1億5千万円)の約5倍となる約7億円を見込む。業績を伸ばすごとに工場を拡張し、今年も冷風乾燥機など新たな設備を導入する。
![江良水産が開発した削り節や麺つゆなどの商品=天草市](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-06/IP240604TAN000078000_01.jpg?itok=hLXEoj67)
16年には熊本市内の削り節問屋と初めて商品を共同開発。熊本地震の発生時、市内の避難所で「お米はあるけど、おかずがない」との声を受け、その場で節を削って提供したところ、喜ばれたのがきっかけだった。
現在は、削り節や麺つゆなど7商品を販売。8月には、だし塩、スパイスだし、だしパックの3商品を新たに出荷する。江良社長は「ダイレクトにお客さんの声が届くのが2次加工業の魅力。もうけは少なくても、自分が食べたいと思えるものを作りたい」とこだわりを見せる。
こうした2次加工品の売り上げは、まだ全体の2%程度。今後は毎年少しずつ商品を増やし、将来的にはECサイトや販売所も開設したい考えだ。「家庭でだしを取る人は減っているが、うどんやおでんなどで身近に親しんでいるもの。インバウンド(訪日客)の需要も見据え、だしの可能性を広げていきたい」(福井一基)
メモ 江良浩社長の曽祖父と祖父が1947年に創業。従業員は14人。24年度の雑節の出荷量は、前年度より1割超多い700トンを見込む。
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