「習い事バス」車内置き去り対策、安全装置の義務や補助なし 専門家「熱中症事故防止へ行政は対策を」
![ときわ幼稚園のバスに取り付けられた安全装置のセンサーを指さす職員=30日、熊本市中央区](/sites/default/files/styles/crop_default/public/2024-06/IP240530TAN000042000_02.jpg?itok=6eU-iGPd)
静岡や福岡で通園バスに園児が置き去りにされ、熱中症で死亡した事故。国は通園バスに安全装置の設置を義務付け、熊本県内でも設置が進んでいるが、スイミングスクールといった習い事のバスは対象外。熱中症の危険性が高まる時季となり、専門家は「行政は事故が起きる前に対策を促すべきだ」と指摘する。
2021年7月、福岡県中間市の保育所の送迎バスに5歳児が取り残されて死亡。22年9月には静岡県牧之原市の認定こども園で3歳児が命を落とした。いずれも死因は熱中症だった。
事故を受けて国は23年4月、幼稚園や保育所、認定こども園、放課後等デイサービスなどの通園バスに安全装置の設置を義務付け。車内の確認を促す音声が流れる「降車時確認式」か、車内センサーによる「自動検知式」、またはその両方を備えた装置が指定され、1台につき設置費用17万5千円を補助する。
熊本県によると、県内では23年度現在、義務化対象のほぼ100%にあたる352施設のバス614台に設置。設置を義務付けてはいないが補助対象(1台8万8千円)である公立小中学校も、希望した28校63台に設置された。
熊本市中央区のときわ幼稚園は、園児約70人が利用するバス3台に降車時確認式と自動検知式を備えた安全装置を設置。森本勇治園長代理(53)は「職員が車内を確認し、後方にあるボタンを押すまで音が鳴り続ける。確認をより徹底するようになった」と話す。
一方、スポーツなどの習い事の送迎バスには安全装置を義務付けておらず、行政の補助もない。設置するかどうかは事業者任せだ。
熊本市北区にあるスイミングスクールは、児童らをバスで送迎。安全装置は付けておらず、降車時は目視や点呼を徹底している。八代市のスイミングスクールも未設置で、児童らを玄関まで送り届けている。「装置を付けるのは金銭的に難しい。行政の支援があればぜひ導入したい」と話す。
習い事のバスにも安全装置を義務付けて補助対象に加えることについて、こども家庭庁安全対策課は「習い事まで含めると収拾がつかない」と消極的。熊本県子ども未来課は「まずは事故が起きた保育所などの安全対策が最優先」として、習い事のバスの設置状況は把握していないという。
こうした現状に、大阪教育大の藤田大輔教授(安全教育学)は「事故が起きた後では遅い。国や県は習い事のバスも含めて対策を講じてほしい」と話す。
夏が近づき、日中の気温は上昇している。日本自動車連盟(JAF)熊本支部は「車内の温度は50度近くに上がることがあり、子どもらを残したままにするのはとても危険」と注意を呼びかけている。(遠山和泉)
◆安全装置導入「保護者も安心」 沖縄の水泳スクール
バス車内への子ども置き去り事故を防ぐため、行政の補助対象外で独自に安全装置を設置している事業所もある。沖縄県内で6教室を展開する「沖縄スイミングスクール」は2023年5月、送迎バス27台全てに装置を取り付けた。
同社では以前、送迎担当者が確認を怠り、車内で寝ている子どもに気付かず車を離れたことがあった。再発防止のため「降車時確認式」の装置を導入。スタッフが自ら取り付け、費用は総額約70万円に抑えた。
同社の担当者は「安全装置はあくまでヒューマンエラーを補うためだが、保護者はより安心して子どもを預けられるようになったと思う」と話す。(遠山和泉)
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