ウィッグや人工乳房の購入、熊本市が助成 6月から がん治療など「アピアランスケア」支援
がん治療に伴う脱毛や乳房手術など、外見の変化による苦痛を軽減する「アピアランスケア」。熊本市は6月から、ケアに必要なウィッグや乳房補整具の助成事業の受け付けを始める。治療費の負担から外見にかける費用を抑える当事者も多い一方で、熊本県内の助成事業は全国に比べ遅れ気味だ。当事者は事業の広がりに期待を寄せる。
熊本市東区の主婦(46)は乳がんの抗がん剤治療中、髪や眉、まつげを一時的に失った。左乳房は全摘出。鏡を見ては「自分の姿を見てすてきに思いたくて、試行錯誤していた」と振り返る。この春、下着に付けるシリコンパッドを約3万5千円で購入。助成を申請する予定で「左右のバランスが取れるようになった」と笑顔を見せる。
乳がんの経験者で、医療用ウィッグ専門の美容室「ヘアークリエイター阿樹」(中央区)の宮之前亜紀さん(54)は「人と会う場面で、髪がないことで注目を浴びてしまう」。ウィッグは手植えや機械植え、人毛の使用などの違いで品質に差があり「助成があればもっと良いウィッグが買えるという人もいる」と話す。
病気や障害がある子どもや家族のケア情報を発信する一般社団法人「チャーミングケア」(大阪府)が昨夏実施した調査によると、全国1741市区町村のうち52%に当たる904市区町村がアピアランスケアに助成。一方熊本県によると、県内では熊本市のほか玉東町、和水町、大津町、南阿蘇村、益城町の6市町村にとどまる。
熊本市はウィッグや帽子のほか、乳がんで乳房を摘出した当事者を想定し、下着に付ける「補整用シリコンパッド」や肌に付ける「人工乳房」も助成。いずれも今年4月1日以降に購入したもので、助成費は購入費の2分の1。上限額はシリコンパッドが1万円、ウィッグや人工乳房などは2万円。市庁舎や市内九つのがん拠点病院などに申請書類を設置している。
市医療対策課は「治療前の自分と違うことがストレスになり、外に出られない、自信がないという人もいる」として、治療と社会参加の両立のためにも利用を呼びかけている。(横川千夏)
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