熊本・西原村の「髙遊窯」、41年の歴史に幕 地震被害もボランティアから元気 5月5日まで最後の作品展
西原村小森の工房「髙遊窯」が、5月いっぱいで41年の歴史に幕を下ろす。窯元を主宰する宇髙弘子さん(77)が、最後の作品展となる「髙遊窯 縄文土器展」を5月5日まで開催中。その後はある限りの在庫を販売する予定で、宇髙さんは「みなさんのおかげで元気に好きな仕事ができた」と感謝を口にする。
窯は、俵山交流館「萌の里」近くの鳥居をくぐり、道を下った森の中にある。1983年に同村高遊地区に窯を開いた後、「静かな場所で作陶に集中できる場所を」と89年に場所を移した。鳥のさえずりが聞こえ、青々と茂った自然の中で多くの作品を生み出してきた。
焼き物に携わること半世紀。8年前の熊本地震では工房が大きな被害を受けた。天井や壁が落ち、丹精込めた陶器の多くが砕け散った。「死ぬかと思うほどの揺れ。直後は窯をやめるしかないと思っていたが、片付けに来てくれたボランティアの皆さんが『頑張ろう』と言ってくれたから今がある」と振り返る。
やっとの思いで再開したが、最近になって重い粘土を運んだり薪[まき]を集めたりする力仕事に体がついてこなくなった。「小さい頃から手仕事が好き。寝ずに48時間窯をたいたこともある。何よりれんがを一つずつ崩して窯から作品を取り出す瞬間がたまらなく好きで、ここまで続けられた」
縄文土器展では、工房周りに咲く草花を描いた陶器など約500点を並べる。初日の4月28日には、閉店を知った常連客が次々と訪れた。長崎県諫早市の女性(55)は「宇髙さんの人柄や陶芸を愛する気持ちがにじむ作品が大好き」と名残を惜しんだ。
宇髙さんは「たくさんの人に、この器や湯飲みで料理やお茶を楽しんでほしい」。最後の日まで元気に来場者を迎える。(草野太一)
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