台湾人サラリーマンのランチから観察する台湾の飲食文化【台湾ってこんなトコVol.8】
■外食文化が根付く台湾のサラリーマンランチ
台湾は外食人口が多く、街を歩くとあちこちに飲食店を見かけます。2023年の飲食業の売上高は1兆279億台湾元(約4兆8,000億円)に達し、過去最高を更新しました。
大部分の台湾のサラリーマンは自分でお弁当を用意して出勤する習慣がないことから、オフィス街にはさまざまな飲食店があります。サラリーマンが出勤する平日だけ営業するという飲食店も少なくありません。
一方で都心部から離れた工業地区で働く人は、会社に従業員用のレストランがなければ、多くの人がデリバリーのサービスを利用したり、コンビニでお昼を調達したりします。
連載の第8回はサラリーマンのランチ事情を取材し、読者の皆さまに台湾人の飲食文化を紹介したいと思います。
■健康意識が台頭!ヘルシー弁当が流行
音楽スタジオでマーケティングとして働く小葉さん(35)と会計担当の雅恵さん(37)は、飲食店ひしめく台北市内に会社がありますが、ランチはデリバリーのアプリで注文し、オフィスで食べるのが好きだそう。取材をした2月のある日、2人はランチに「ヘルシー弁当」を選んでいました。
台湾では近年、たんぱく質が豊富なメインのおかずに野菜を組み合わせた健康志向のお弁当を販売する店を多く見かけるようになりました。食材を主にゆでて調理しているのが特徴です。お弁当一つの価格は100~200元(470 ~940円程度)が多いようです。
小葉さんによると、ヘルシー弁当は味付けが薄く、野菜も多いことから、良い肌の状態をキープするのに役立っていると感じているそう。今年35歳の彼女は健康に気を遣い出していて、週3日はヘルシー弁当を選んでいます。
■アプリで「カスタムメード」のサービスを利用
体形をキープするため、週5日ヘルシー弁当を選ぶという雅恵さん。この日のランチはアプリで「カスタムメード」のサービスを利用していました。
ご飯はやめておかずを多めに頼むことにし、メインのおかずである「蒜泥肉片(ゆで豚のニンニクソースがけ)」に豆腐干(半乾燥の豆腐)、キャベツ、アブラナ、サツマイモ、味付け卵を組み合わせました。
彼女がランチに求めるのは薄い味付けと豊富な野菜、タンパク質と良質なでんぷんです。
ただ、小葉さんは、普段は健康のためにこうしたランチを選ぶけれど、食欲を解放したい時はハンバーガーやトンカツなどカロリーの高い食べ物を食べるそうです。
■数少ない弁当派、時間もお金も節約!
バイオ企業の管理部門に勤務する筱薇さん(31)はお弁当を自分で持参する、オフィスの中でも数少ない社員の一人です。
オフィスは台北の中心部にあり、周りの飲食店はお昼になるといつも長い行列ができます。
さらに価格も高めなので、ほぼ毎日お弁当を持って出勤します。お昼を食べて時間があれば昼寝もします(ちなみに多くの台湾企業には昼寝の時間があります)。
筱薇さんのお弁当のおかずは、前日の夜にお母さんが作った夜ご飯の残り。玄米のご飯に肉類のメインのおかず、野菜を二品添えることが多く、外でおかずを買うこともあります。
ここで一つ言及しておきたいのが、台湾の会社には一般的に電子レンジが備えてあること。台湾人は温かい弁当を食べる習慣があり、お昼になると電子レンジで温めてから食べるためです。
■「素食(肉類を使わない料理)」の習慣
筆者の私がお昼をよく食べるのは、会社の近くにある「素食(肉類を使わない料理)」のレストランです。
台湾は民間信仰の関係から、日本と比べて肉類を食べない人が少なくありません。私のようにベジタリアンではない人の中にも、多くの人が旧暦の1日と15日は肉や魚を食べないようにしています。
海外に由来する「ミートレスマンデー」の流れで、月曜日には肉類を食べないという人も少なくありません。
台湾には多くの「素食(肉類を使わない料理)」のレストランがあり、こうした日には利用する人が特に多くなります。
■みんなでランチを注文する恒例行事
通関業に従事する詩淳さん(44)の会社は市街地から遠く、利用できる飲食店の選択肢が少ないため、彼女が同僚約15人のランチの注文を担当しています。
毎日お昼までにその日出勤している人数を確認し、メニュー表を配布。正午にはお昼を食べられるよう遅くとも午前10時半までにお店に料理を注文します。
メニューはチャーハンや麺類、ファストフード、火鍋など。オフィスにはさまざまなお店のメニューを集めたファイルが備えられています。
詩淳さんは、同僚の料理の好みだけでなく、できるだけ毎日違った味の料理を食べられるように気を配っているそう。お昼を食べて喜んでもらえたら、それが自身の達成感になると話します。
■人気の選択肢、台湾式ビュッフェ
台湾人のランチの選択肢として定着しているものと言えば、台湾式ビュッフェでしょう。お店のカウンターの上には20~30種のおかずが並び、食べたい料理や量を自分で決めることができます。
会計の方法はお店によってさまざま。料理の重さや料理そのもので料金を計算するお店もあれば、お店のオーナーが料理を見て値段を決める店もあるといいます。
私自身の経験では、消費額は少ないときは50元くらい、多いときは200元くらいなどさまざまです。
友達は会計の方法が分からず、500元余りの料理を選んでいた、なんて話もあります。まずは利用するお店で会計方法を確認するのが良いでしょう。
■従業員向けレストランも
台湾南部の産業団地にある日系企業の電子製品工場で働く陳さん(34)は毎日、会社が設けた従業員向けのレストランで食事を取ります。
レストランではビュッフェ形式で6種類のおかずを提供し、メインのおかず(肉類)に三つのおかずがついて、お値段は65元。会社の補助を差し引き、従業員が支払うのは35元だけです。
多くの従業員がこのレストランを利用するそう。もっとおいしい料理を、と希望する人もいるとのことですが、陳さんは、出勤日はおなかいっぱい食べられれば良いと考えているそうです。
銀行の窓口で働く張さん(35)はランチに片手で食べられる物を選んでいます。お昼の休憩時間が45分しかなく、多忙なためコンビニを毎日利用しているそう。でも夜ご飯は比較的多めに食べるとのことです。
台湾のサラリーマンのランチ事情を特集しました。読者の皆さまが台湾の飲食文化への理解を深めるきっかけになればうれしいです!
もっと台湾を知りたい方に「NNA POWER ASIA 台湾」
<この記事を書いたのは>
張成慧(チョウ・ナルエ)
NNA台湾編集部に勤める30代の台湾人女性。大学時代に交換留学生として日本に約1年間滞在して以来、日本が恋しく年に2回のペースで各地を訪ねています。旅やアート作品などを通じて、自身の感性が磨かれるものごとを見つけるのが好き。
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