台北グランドトレイルに挑戦!都会の風景を堪能できるコースも【台湾ってこんなトコVol.9】
■台北のハイキングコース「台北大縦走(台北グランドトレイル)」
日本から大勢の観光客が訪れる台北市ですが、山に囲まれた盆地ということはご存じでしょうか。台北市政府によると、市全体の面積の55%を山が占め、市内には154本の登山道が整備されています。
連載の第9回は、そんな台北のハイキングコース「台北大縦走(台北グランドトレイル)」をすぱいすの読者の皆さまにご紹介したいと思います!
■「台北大縦走(台北グランドトレイル)」とは?
まず台北グランドトレイルとはどのようなものか、台北市政府工務局大地工程処道路歩道科の蔡正発科長にお話をうかがいました。
蔡科長によると、台北市では2017年に「長距離歩道」の構想について計画を始めたそうです。
「当時、スペインや北米など海外では長距離歩道が流行しており、われわれも台北の長距離歩道について考え始めました」と蔡科長は振り返ります。
台北市には、北から南に向かって大屯山、七星山、五指山、南港山、二格山という五つの山系があります。
実地調査などを経て、翌年には7セクション計92キロメートルのトレイルコースが完成しました。
2021年には新たに自転車コースも追加し、現在の8セクション全長約130キロにわたる台北グランドトレイルができました。
■初心者から上級者まで楽しめるコースを完備!
台北グランドトレイルの8セクションのうち、第1~第4セクションは台北市北部の「陽明山国家公園」を通過します。開発が禁止された保護地域のため、ルートは自然な状態をとどめ、登るのが少し難しいところがあります。
今年既に8セクションを踏破した蔡科長に各セクションの特色を聞きました。
■第1セクション
<北投区の捷運関渡站(MRT関渡駅)から陽明山国家公園内の二子坪遊客服務站(二子坪ビジターセンター)まで>
・距離:約13キロ
・所要時間:徒歩7~8時間
台北グランドトレイルのスタート地点であり、ゴール地点でもあるMRT関渡駅を出発。海抜二十数メートルから約900メートルまで登ります。途中に台北芸術大学のキャンパスや、竹林歩道など美しい風景を楽しめる場所があります。
■第2セクション
<陽明山国家公園内の面天坪涼亭(第1セクションのゴール地点から約4キロ)から同公園内の小油坑まで>
・距離:約12キロ
・所要時間:徒歩6~7時間
最も難しいコースとされる第2セクションは途中、大屯主峰(標高1,092メートル)など三つの高い山を登ります。
整備されていない場所も多く、ロープをつかんで進む必要がある場所も。ゴールの小油坑に向かう途中には、真っ白なカラーの花やアジサイの花を楽しめる谷「竹子湖」を通過します。
■第3セクション
<小油坑から陽明山国家公園内の風櫃嘴まで>
・距離:約13キロ
・所要時間:徒歩7~8時間
台北市で最も高い「七星山」(標高1,120メートル)に登ります。
頂上からは台北グランドトレイルの出発地点である関渡方面を見下ろすことができます。
下山すると「擎天崗」と呼ばれる草原が広がり、水牛が放牧されているのどかな風景を楽しめます。
■第4セクション
<風櫃嘴から南港区の中華科技大学まで>
・距離:約18キロ
・所要時間:徒歩7~8時間
第3セクションが終わると、台北市の南東部に位置する南港区まで南下します。
蔡科長によると、途中に通る「双渓溝古道」はまるで森林の中にある秘境のようで、特にお気に入りの場所だそう。このセクションは川沿いの歩道や滝を通るため、夏は涼しくて気持ちいいらしいです。
■第5セクション
<捷運剣潭站(MRT剣潭駅)から内湖区の碧山巌まで>
・距離:約12キロ
・所要時間:徒歩約6~7時間
台北グランドトレイルの中で唯一、東西に移動するセクション。
市街地に最も近く、比較的こう配が緩いルートで歩きやすいとのこと。超高層ビルの「台北101」のほか、台北松山空港、故宮博物院などを眼下に収めることができます。
■第6セクション
<南港区の中華科技大学から文山区の捷運麟光站(MRT麟光駅)まで>
・距離:約11キロ
・所要時間:徒歩約5~6時間
第4セクションのゴールから、有名な「九五峰」を通ります。
ここは毎年年末に台北101で花火が打ち上げられる際、多くの人が観賞するために登ります。蔡科長によると、台北の夜景を見たいなら、第5セクションか第6セクションを選ぶのが良いそう。
■第7セクション
<文山区の世界山荘から同区の政治大学裏山まで>
・距離:約13キロ
・所要時間:徒歩5~6時間
第5セクションと並んで比較的簡単なセクションとされます。
「指南宮」に向かう階段道の両脇には石灯ろうなどがあり、日本らしい雰囲気も。ロープウエーの「猫空站」(猫空駅)のそばにはレストランがたくさんあります。続く「樟樹歩道」はルピナスやコスモス、ヒマワリの花が楽しめます。
■第8 セクション
<文山区の捷運動物園站(MRT動物園駅)から捷運関渡站(MRT関渡駅)まで>
・距離:約38キロ
・所要時間:自転車約4〜5時間
2021年に新たに組み込まれたセクション。川沿いの自転車道を走ります。飲食店などが営業していてにぎやかな大稲テイ(テイ=土へんに呈)を通り、第1セクション出発地点の関渡駅がゴールとなります。
■連結セクション
<捷運関渡站(MRT関渡駅)から捷運剣潭站(MRT剣潭駅)まで>
・距離:約11キロ
・所要時間:自転車約1時間
第5セクションと第8セクションをつなぐためにある連結セクション。
■認証活動でアウトドアを奨励!
台北市政府は台北グランドトレイルを広めるため、毎年認証活動を行っています。
今年は3月1日から12月31日までの期間に全8セクションを踏破した人に証明書と記念品を贈ります。
認証活動に参加するには、アプリ「健行筆記」を利用します。アプリをダウンロードしていない人は各セクションに二つある「記念プレート」と一緒に写真を撮る方法でもOKです。
蔡科長によると、認証活動に参加する人は増えていて、2023年は7,994人に達したそうです。
今年は活動が始まって約1カ月後の4月8日時点で、1,627人が1回目の認証を受けました。
■証明書を受け取りに来た人にインタビュー
蔡科長への取材中、証明書を受け取りに来た人に話を聞くことができました。
男性の滕さん(50)は今回、台北グランドトレイルを7日間で2回踏破したそう。
友人の紹介で2021年から台北グランドトレイルに挑戦し始めたとのことです。
8セクションそれぞれに特色があるといい、どのセクションも好きだとのこと。
「第7セクションは難易度が低い上に、コース沿いでは特色のあるレストランで食事も楽しめるので、友達と一緒に歩くのにぴったり」と教えてくれました。一方で、第2、第3セクションは挑戦のしがいがあるそうです。
滕さんは、山間部にアクセスしやすく、四季折々の植物や動物などを観察できること、さまざまな角度から都市の景観を楽しめるのが、自身にとって台北グランドトレイルの最大の魅力だと話します。
50代女性の李さんは登山中に知り合った友人と9日かけて2回踏破しました。大事なのは証明書や記念品ではなく、踏破した時の達成感だと強調していました。
■最も簡単な(?)第5セクションに挑戦!
これまで一度も台北グランドトレイルを歩いたことのない私ですが、今回は友人と一緒に最も簡単とされる第5セクションに挑戦してみました!
私たちは連結セクションからスタートし、関渡駅から台北市内を流れる基隆河沿いに整備された自転車道を走って、剣潭駅を目指しました。
利用したのは、自転車シェアリングサービス「ユーバイク(YouBike、微笑単車)」。約1時間で剣潭駅に到着し、5時間にわたる徒歩の旅が始まりました。
■自転車に乗って登山道の入り口までGO!
■5時間にわたる徒歩の旅がスタート…
まずは「剣潭山親山歩道」を歩きます。ここは元々市民に人気の登山道です。
50分ほど山を登ると、台北松山空港を一望できる展望台「老地方観機平台」に到着しました。
さらに2キロほど進むと、「文間山平台」と呼ばれる展望台に着きました。ここからも台北101を望むことができました。夜景を見るのに良い場所です。
さらに前に進むこと約5分、故宮博物院を望むことができました。
■ゴールできなかった第5セクション
初めて台北グランドトレイルに挑戦した私たち。
「最も簡単」と呼ばれるセクションを甘く見過ぎていました…。
この日は暑く、正午近くに出発したため、連結セクションの自転車ルートが終わった段階で体力をかなり消耗していました。
山を登っているうちに歩くスピードはどんどん遅くなり、日が落ちるまでに第5セクションを踏破することはできませんでした。私たちはゴールから少し離れた場所で下山することにしました。
実際に歩いてみると、台北グランドトレイルを歩き切るのはそんなに簡単ではないことが分かりました!
私と友人は今年の秋、難易度が非常に高いとされる第2セクションを歩き切ることを目標にすることを決めました。今から体力向上に励みます!
<この記事を書いたのは>
張成慧(チョウ・ナルエ)
NNA台湾編集部に勤める30代の台湾人女性。大学時代に交換留学生として日本に約1年間滞在して以来、日本が恋しく年に2回のペースで各地を訪ねています。旅やアート作品などを通じて、自身の感性が磨かれるものごとを見つけるのが好き。
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