水俣病語り部 ネットで講話 感染防止へ、対面方式から変更

熊本日日新聞 | 2021年3月4日 09:46

カメラに向かい、自身の体験を語る胎児性水俣病患者の滝下昌文さん=3日、水俣市
カメラに向かい、自身の体験を語る胎児性水俣病患者の滝下昌文さん=3日、水俣市

 熊本県水俣市の胎児性水俣病患者の滝下昌文さん(64)が3日、水俣芦北地域の福祉施設関係者に、市立水俣病資料館からオンラインで自身の半生や差別の体験を語った。新型コロナウイルス感染防止のため、通常の対面方式を変更。資料館での語り部活動は昨年2月以来開かれていない。

 リーダー研修の一環で、約20人が市内の別施設から聴いた。滝下さんは、幼少期の治療の大変さや体調不安から仕事に就けず、将来に希望を持てなかったことを回想。石川さゆりさんのコンサート実現をきっかけに、「生き方に自信が持て、いろんな仕事に挑戦できた」と打ち明けた。参加者には「障害者と水俣病患者を線引きせずに接して」と訴えた。

 終了後、滝下さんは「久しぶりで緊張したが、話ができてよかった」。資料館は「ほかの語り部とも相談し、よりよい講話の方法を探りたい」とした。

 県水俣病保健課は「語り部の活動機会を確保する上で、オンラインなど新たな方式は有効と考えた」と説明。県内の小学5年生が資料館で語り部の講話を聞く県事業について、県義務教育課は「感染拡大防止の観点から、来年度はオンラインでの実施を検討している」と話している。(鎌倉尊信)