熊本県幹部の見逃し指示「被害者は県民」 公益通報者が証言 TKUヒューマンの助成金不適切受給問題

熊本日日新聞 | 2023年11月21日 20:10

県の旅行割引事業を巡り、県上層部による見逃し指示があったと報道各社に外部通報した書面を持つ公益通報者=熊本市中央区

 熊本県の旅行割引事業「くまもと再発見の旅」を巡り、テレビ熊本(TKU)の関連会社TKUヒューマンが助成金を不適切に受給していた問題で、県上層部が見逃すよう担当課に指示したとして代理人を通じて外部通報した公益通報者は21日までに、熊本日日新聞のインタビューに答えた。通報者は「返還されるべき公金約2千万円が見逃された。被害者は全ての県民だ」と訴えた。(植木泰士)

 -県の旅行割引事業は新型コロナウイルス禍の経済対策として落ち込んだ業種を幅広く支援する狙いで、飲食や宿泊と交通手段を組み合わせた旅行商品が助成対象でした。2021年7月からは日帰り商品も追加されました。

 「この助成事業は、旅行業法に規定される旅行商品にさらに細かい要件が設定され、旅行業者が利用者の当日の行程を管理できるか否かがポイントでした。行程が管理できていなければ、利用者が帰省で交通機関だけ使ったり、マイカーで店に行き食事だけしたりするケースが出てしまいます。これでは、旅行業法が定めた旅行商品とは言えません」

 -今年1月、阪急交通社熊本支店が公共交通機関乗り放題の周遊券付き日帰り商品で助成金を受給していたことが発覚し、県は支給済みの助成金とクーポン券費用計約1500万円の全額返還を求め、同社は事実関係を認めて応じました。

 「阪急交通社は交通手段が対象外の周遊券だったことと、添乗員らによる行程管理ができていなかったという二つの違反が指摘されました。これが発端となり県は事業に参加した全101社を調査し、ヒューマン社を含む14社が周遊券付き商品で助成金を受給していたことが分かりました。ヒューマン社には周遊券とタクシー券をセットにした商品もありました。これらは発着地点が管理できませんし、利用者にタクシーを手配させることは旅行業法違反になります。県の担当課はさらに追跡する方針でした」

 -県は3月に不適切受給の調査結果を公表した際、周遊券にタクシー券が付いたヒューマン社の商品に言及しませんでした。

 「担当課はタクシーの利用状況を精査して違反と結論付けようとしていました。ところが、県の上層部が2月に担当課の幹部らを自室に呼び出してから、幹部の態度が一変しました。『ミリミリ(ミリ単位で)一個一個詰めるのか、と言われた』『(返還額は)これくらいがいいと、TKUが言いよらす』『県が深掘りするとやばい』と現場に指示したのです」

 -県は4月、ヒューマン社のタクシー券付き商品について「観光庁に確認して補助対象と分かった」として「問題ない」と結論付けました。熊日は9月、この商品約3千件のうち、少なくとも半数以上でタクシー券が未使用だったと報じました。タクシー業界に渡るはずだった助成金約160万円が同社に残ったことになります。

 「担当課の幹部らから指示を受けた現場の職員らは、『これまでの事業者への指導と要件の解釈が違う』『(背任容疑で)私たちは逮捕されるのでしょうか』と動揺していました。この事業は国の『Go To トラベル』の要件をそのまま当てはめたものです。同じ事業で、ある事業者には厳格に対処しながら、別の事業者に対しては事後的に助成要件の解釈を変更して見逃すことが、行政として許されるのか。悩んだ末に公益通報する決断をしました」

 -公益通報を受け県は10月、弁護士3人の第三者調査委員会を設置し、関係者への聴取が続いています。

 「この問題の被害者は全ての県民です。コロナ禍で多くの人々が苦しむ姿を見てきました。県が返還を求めずに見逃されたのは約2千万円の公金です。県民の大切なお金の使途を『ミリミリ詰める』のが公務員の職務ではないでしょうか。公益通報の当事者となり、苦しい日々が続いていますが、私は公正な行政を実現したいだけなのです」

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