動物にも「快適な環境」を 熊本市動植物園、アニマルウェルフェア向上へ 展示や飼育方法、見直し進む
快適な環境で動物を飼育する「アニマルウェルフェア」(動物福祉、AW)が世界的な潮流となる中、熊本市動植物園(東区)が、レクリエーション色の強い展示や飼育方法の見直しを進めている。ストレスに配慮したふれあいイベントや自然に近い状態での飼育、教育への注力など園の姿が変わりつつある。(米本充宏)
「隠れている子は、そっとしててあげてね」─。8月下旬にあった市動植物園のふれあいイベント。モルモットが木箱の中で自由に動き回ったり、草をはんだりする姿を見て興奮する子どもに、飼育員が語りかけていた。
同園では、子どもに抱きかかえられたモルモットが落ちて骨折したことがあり、2018年からは観察を重視する運用に改めた。飼育員の溝端菜穂子さん(49)は「触れることで命の大切さを学んでほしいが、動物の負担を減らしながらどう続けるか。試行錯誤しています」と明かす。
■ストレス行動
市動植物園は約15年前から、東海大農学部の伊藤秀一教授(51)と共同で動物のストレス行動を研究している。
動物はストレスを感じると同じ動きを繰り返すなど異常行動をすることがある。同園では、餌の与え方や設備の工夫で動物本来の行動を促す「環境エンリッチメント」を推進。ホッキョクグマでは、餌を通常の馬肉から毛皮が付いたイノシシ肉に変えたり、葉が付いた木の枝を飼育スペースに入れたりする工夫を実践している。異常行動は減り、野生に近い多様な行動をすることが増えたという。
動物の行動は伊藤教授の研究室の学生がモニタリング。観客の有無や餌の種類などの状況や行動、時間をタブレットに記録し、データを蓄積している。園と情報を共有し、動物の生活の質向上にも役立っているという。
■「教育」に力
見るだけでなく、動物を通した学びにも力を入れる。年齢や目的に応じて学習方法、材料、内容を組み立てる「教育プログラム」を今年4月に始めた。
プログラムでは、受講者と園が協議し、体験かツアー、座学のいずれかを選択。剝製や動物のふんといった材料、生物多様性や動物園の役割などの内容を組み合わせ、学びたい分野について理解を深めてもらう。秋以降、約100件の予約が入っているという。
プログラム集には、熊本地震の被災について学ぶ項目もある。国内の園でも講演やツアーなど独自に開く施設もあるが、伊藤教授は「熊本市動植物園ほどのプログラムを作った園は少ないだろう」と評価する。
残り 741字(全文 1768字)
RECOMMEND
あなたにおすすめPICK UP
注目コンテンツNEWS LIST
熊本のニュース-
【2024世相の鏡④】高齢夫婦の嘱託殺人 悩み、孤立…見守りの距離感に難しさ
熊本日日新聞 -
【独自】「熊本岸田会」が政治団体の届け出なく政治活動か 岸田文雄前首相の九州初の後援会
熊本日日新聞 -
立民の国会議員、水俣病患者らと面会 最終解決図る法案、提出に向け現地視察
熊本日日新聞 -
高校生がビジネス考案、大人の評価は? 熊本城ホールで発表会 南九州エリアの5校6グループ
熊本日日新聞 -
南阿蘇鉄道がイルミネーション列車 25年1月5日まで 金・土に運行
熊本日日新聞 -
くまさんメディクス(熊本市)が新工場の地鎮祭 菊池市旭志 26年夏に稼働へ
熊本日日新聞 -
【市民が守った立田山~公有化事業50年㊤】住民の熱意、行政動かす
熊本日日新聞 -
堤酒造(あさぎり町)のジン、米国のコンテストで1位
熊本日日新聞 -
「ホテル阿蘇の司」が「亀の井ホテル」に名称変更、改装オープン ビュッフェレストランなど大幅改装
熊本日日新聞 -
東稜高、台湾の学校と姉妹校協定締結
熊本日日新聞
STORY
連載・企画-
移動の足を考える
熊本都市圏の住民の間には、慢性化している交通渋滞への不満が強くあります。台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町進出などでこの状況に拍車が掛かるとみられる中、「渋滞都市」から抜け出す取り組みが急務。その切り札とみられるのが公共交通機関の活性化です。連載企画「移動の足を考える」では、それぞれの交通機関の現状を紹介し、あるべき姿を模索します。
-
学んで得する!お金の話「まね得」
お金に関する知識が生活防衛やより良い生活につながる時代。税金や年金、投資に新NISA、相続や保険などお金に関わる正しい知識を、しっかりした家計管理で安心して生活したい記者と一緒に、楽しく学んでいきましょう。
※次回は「成年後見制度」。12月27日(金)に更新予定です。