熊本県の歴史、偉人、学びにいこう 新千円札の北里柴三郎や撃沈された軍艦「長良」 【ほっとライン】
県内にたくさんある歴史や自然、偉人の功績を知ることができる施設。「近くだけど行ったことない」「あるのは知っているけど…」という人も多いのでは。新型コロナウイルスも落ち着いて初めての夏。ちょっとしたお出掛けのメニューに加えてみては? 3施設を紹介する。
お札発行で注目度アップ 北里柴三郎記念館(小国町)
来年7月にもお目見えする新千円札の顔・世界的細菌学者の北里柴三郎。お札が発行されると注目度が上がるのは必至。その前に柴三郎の故郷、小国町北里にある「北里柴三郎記念館」に出掛けて、功績を振り返るのもいいかもしれない。
記念館では、柴三郎が1916(大正5)年に郷里の青少年のために私財を投じて建てた「北里文庫」と「貴賓館」、65(昭和40)年に移築修復した生家の一部を保存している。
北里文庫は洋風図書館で、2013年に内部を資料館に改修した。愛用の顕微鏡や文献、業績をたどるパネルが並び、蔵造りの書庫(非公開)に約1500冊の蔵書がある。
貴賓館は和風2階建て。幼少期の柴三郎が南小国町の親戚、橋本家に預けられた折に、ぴかぴかに磨いた「光る縁側」が目を引く。
柴三郎のひ孫で、昨年館長に就いた北里大名誉教授の北里英郎さん(66)は「柴三郎が見た同じ風景を眺め、耳を澄まし、感染症研究に尽くした生き方を感じてほしい」という。
柴三郎が見た風景をしのばせるものの一つが、記念館入口にある2本の小国杉。107年前に柴三郎と乕[とら]夫妻が植栽した。空に向かってまっすぐ伸びている。(花木弘)
北里柴三郎記念館 午前9時半~午後4時半。年末年始を除き無休。入館料は大人400円、小中高生250円。団体割引あり。☎0967(46)5466。※9月に映像で柴三郎の足跡をたどるシアターホールがオープンする。
■戦争の悲劇伝える資料500点 軍艦長良記念館(天草市)
天草市牛深町にあるのは「軍艦長良記念館」。「長良」は旧日本海軍の軽巡洋艦で太平洋戦争中の1944(昭和19)年8月7日、牛深の沖約10キロで米潜水艦クローカーに撃沈され、今も海底に眠っている。乗組員583人のうち235人は地元の漁民らに救助されたが、348人が死亡した。
悲劇を風化させずに次世代に伝えるため、旧牛深市社会福祉協議会が98年、「うしぶか海彩館」内にオープンした。乗組員の遺影や遺品、長良の模型や写真、新聞記事などの資料約500点を展示している。
特に目を奪われるのは、魚雷を受けて沈没する長良の写真を提供したクローカーのジョン・E・リー元艦長のメッセージ。多くの乗組員の命を救った漁民らへの感謝の言葉とともに「戦争は、出征する多くの若者たちの命を無駄にするだけで、どこにも勝者など存在しない」と英文で記されている。
開館時から資料収集や保存に携わっている天草市社協常務理事の福本壯一さん(68)は「ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、戦闘は終わりが見えない。記念館で戦争の悲惨さと平和の尊さを感じてほしい」と話す。(坂本明彦)
軍艦長良記念館 道の駅「うしぶか海彩館」展示棟2階。午前9時~午後6時。無休。入館無料。天草市社会福祉協議会牛深支所☎0969(72)2904。
5分野の専門家が企画展 県博物館ネットワークセンター(宇城市)
宇城市松橋町には県博物館ネットワークセンターがある。2015年、県が県内の博物館をつなぐ文化施設のハブの役割を担う施設として設置した。約64万点の資料を所蔵。歴史・民族・植物・動物・地学の5分野の専門家が常駐し、それぞれ年1回の企画展を開催している。
23日まで開催しているのが、熊本にまつわる明治から昭和初期までの絵葉書を展示した「くまもと絵葉書ものがたり」。1902年と31年の陸軍特別大演習や35年の新興熊本大博覧会といった熊本の歴史的な出来事のほか、噴煙を吐く阿蘇、神社や新聞社など建造物など約260点。歴史資料としての価値も高い。
バラエティー豊富な企画を続けているが、認知度はいまひとつ。西側に国道3号が通るが入り口が分かりづらいのも原因か。「リピーターが多い。新規の方にも知ってほしい」と参事の後藤鮎子さん(42)。絵葉書展を担当した歴史専門の嘱託員、堤将太さん(37)は「ドライブがてら、立ち寄ってもらえるとうれしい」。(飛松佐和子)
県博物館ネットワークセンター 午前9時~午後5時。月曜日休館(祝日の場合は翌日)。観覧無料。☎0964(34)3301。
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