吉川元農相起訴 政官界工作の実態解明を

01月17日 08:11

 吉川貴盛元農相が、大臣在任中に鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの秋田善祺元代表から現金500万円を受け取ったとして収賄罪で在宅起訴された。

 家畜を快適な環境で飼育する国際基準案について、業界団体の役員を務めていた元代表から政府として反対するよう依頼され、その見返りに現金を受け取ったとされる。元代表も贈賄罪で在宅起訴された。

 元代表の働き掛けは、農水族と呼ばれるほかの国会議員や農水官僚らにも及んでおり、農政の政策決定がカネと癒着でゆがめられていた恐れがある。政官界工作の実態を解明しなければならない。

 吉川元農相は在任中の2018年11月~19年8月、元代表と頻繁に面会。大臣室などで3回にわたって現金を受領したとされる。任意の事情聴取に対して元農相は現金の授受は認めたものの、「大臣の就任祝いだと思った」などと話し賄賂性を否定していた。

 しかし、最初の授受は元農相が国会で国際基準案について答弁した日で、農水省はその後、国際機関に反論書を出している。国際基準案に従えばコスト増となるため、鶏卵業界にとって「死活問題」であったと言われている。

 元代表らは、鶏卵価格の下落に際して生産者の損失を補塡[ほてん]する「鶏卵生産者経営安定対策事業」についても元農相らへの要望を繰り返していた。20年度には、補塡対象を大規模生産者に広げたり、需給調整のために鶏を処分した場合の奨励金を増額したりする変更が行われた。東京地検特捜部は一連の現金提供が農相の職務に関する賄賂だったと判断した。

 現金提供は吉川氏の大臣就任前と退任後にも行われていた。特捜部が賄賂と認定した以外で受領した総額は1300万円に上るとみられる。

 農水族の重鎮として知られた元農相の西川公也氏も昨年12月、元代表からの現金数百万円の受領疑惑で内閣官房参与を辞任。西川氏はアキタ社の顧問にも就き、18年11月には元代表と共に農水省に出向いて、農相だった吉川氏に国際基準緩和を求める要望書を提出する場に立ち会っていた。元代表は農水省幹部にもたびたび接触しており、元次官や元畜産部長が西川氏と共に同社の接待に招かれていたことも明らかになっている。

 一連の現金受領疑惑は、河井克行元法相夫妻の参院選買収事件の捜査でアキタ社が家宅捜索を受けたことが端緒となった。この事件や、安倍晋三前首相後援会の「桜を見る会」夕食会の費用補塡問題も、当事者である政治家が説明責任を果たしたとは言い難い。

 「政治とカネ」の問題は後を絶たず、国民の政治不信は払拭[ふっしょく]されないままだ。厳しい状況を打開するためにも、菅義偉首相は自ら真相究明に乗りだし、信頼回復に努めなければならない。あす召集される通常国会でも、参考人招致などあらゆる手を尽くして事件を検証してもらいたい。

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