トランプ派の暴挙 米民主主義に汚点残した

01月09日 09:11

 米首都ワシントンで6日、大統領選敗北の結果に抗議するトランプ大統領の支持者らが、連邦議会議事堂を一時占拠。警察と衝突して複数の死者が出る惨事となった。

 議事堂の占拠は、議会がバイデン次期大統領の当選を正式認定する手続きを進めている最中に起きた。実力行使を暗に促したのは、大統領選の不正を訴えるトランプ氏自身だった。意に沿わない結果を暴力で覆そうとしたとも取れる言動に憤りを禁じ得ない。

 トランプ政権の4年間で、米国社会では党派や人種、経済力などあらゆる面の分断がさらに進み、国民間の憎悪が膨らんだ。今回の暴挙も、国民より自分の利益を優先し、分断と憎悪を求心力の源泉としてきたトランプ氏の政治手法の延長線上で起きたと言える。

 バイデン氏の当選は手続きの一時中断を経て正式認定された。トランプ政権では腹心の離反が相次ぎ、大統領の孤立化が加速。2週間後の交代を前に大統領解任の動きも出始め、トランプ氏は7日、ツイッターでバイデン氏の勝利を認めた。とはいえ、民主主義の盟主を自任する米国の歴史に、消すことのできない汚点が残った。

 議会は6日、下院本会議場で上下両院合同本会議を開き、大統領選の最後の手続きとなる選挙人投票の開票を実施していた。トランプ氏はこれに先立ち、ホワイトハウス前で開いた大規模集会で「地滑り的勝利を収めた」と根拠なく主張。支持者に対し議会に向かうよう呼び掛けた。

 これを受けて大勢の支持者が議事堂に向けて行進。数百人が議事堂の外に設けられたバリケードを突破し警察当局と衝突した。支持者らは上院本会議場を一時占拠。下院本会議場は封鎖され、合同本会議は中断を余儀なくされた。

 一連の騒動に対し、バイデン氏は演説で「米国の民主主義が前例のない攻撃を受けている。抗議活動ではなく暴動だ」と非難。トランプ氏も7日、ツイッターで自身の支持者らの行動を「悪質な攻撃だ。暴力や無法に憤っている。米民主主義の府を汚した」と非難したが、扇動したと批判されている自身の責任には触れなかった。

 トランプ氏の支持者らはバイデン次期政権の正統性を認めておらず、バイデン氏が今後何かを呼び掛けても応じる可能性は低い。今のままでは、国民の融和は絶望的だと言わざるを得ない。

 経済格差や価値観の分断が広がる中、選挙敗北でさらに不満をため込む共和党支持層とどう対話していくのか。バイデン氏は就任早々難しいかじ取りを迫られる。

 米国が世界のリーダーとしての誇りと信頼を取り戻すには、全国民が支持政党の壁を超え、暴力では何も解決しないという「当たり前のこと」を共有するところからやり直すほかあるまい。日本をはじめとする世界の民主主義国も、米国で広がった対立の本質を理解し、分断や憎悪ではなく、互いを思いやることを優先する国づくりを進めるべきだ。

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