1月23日付

01月23日 09:13

 <オリンピック反対論者の主張にも理はあるが、(中略)やっぱりこれをやってよかった>。作家の三島由紀夫は、1964年にアジアで初めて開催された東京五輪の開会式を見て、率直にそう思ったと書いている▼聖火について述べるのに、日本人の宗教感覚から説き起こすところが三島らしい。<聖火台に点ぜられた聖火は、再び東洋と西洋を結ぶ火だともいえる>と、高揚感あふれる文章である(『1964年の東京オリンピック』河出書房新社)▼三島のように「これをやってよかった」と心から思えるのだろうか。世界的なコロナ禍を受け史上初めて延期された東京五輪の開幕まで、きょうで半年となった。延期が決まったのは昨年3月。五輪への逆風は、そのころ以上のようである▼国内感染者の累計は30万人を超えた。重症者も今月に入って1週間に100人のペースで増加。医療現場は限界に近づく。それでも菅義偉首相は判で押したように「人類がコロナに打ち勝った証し」として実現を目指すと繰り返すばかりだ▼そもそも、そういうせりふは打ち勝った後に言うものでは。今のところどう見ても負け続けのよう。首相はさらに、国内外でのワクチン普及は五輪開催の前提条件ではない、とも述べた。ワクチンなしでどうやって安全な大会ができるのか▼首相の説明力不足は今に始まった話ではないが、安全安心な五輪が実現可能というなら、その根拠を示してもらいたいものである。借り物ではなく、私たちの心に響く自らの言葉で。

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