「こころ」 先生の性格が好き。猫みたいにちょっと気まぐれ<アイラヴ漱石先生朗読館=2022年12月11日放送>

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熊本日日新聞 2022年12月11日 00:00
「アイラヴ漱石先生 漱石探求ガイドブック」NPO法人くまもと漱石文化振興会、熊本大学文学部附属漱石・八雲教育研究センター編 集広舎1650円 191ページ
「アイラヴ漱石先生 漱石探求ガイドブック」NPO法人くまもと漱石文化振興会、熊本大学文学部附属漱石・八雲教育研究センター編 集広舎1650円 191ページ

おはようございます。本田みずえです。夏目漱石の作品について理解を深めたい、漱石について詳しく知りたい、そんな人たちに向けて書かれたガイドブック、アイラヴ漱石先生が、今年4月に発刊されました。夏目漱石は、第五高等学校の英語教師として、生まれ故郷以外の土地では最も長い4年3ヶ月を熊本で過ごしました。この番組では、そんな漱石先生の文学の面白さを、熊本の高校生の皆さんと探究していきます。今日は、尚絅高校1年生の浜宏奈さん、山本百音さんと、漱石の長編小説「こころ」の魅力を探っていきましょう。解説は、元高校の国語の先生でした西口裕美子さんです。この番組は、NPO法人くまもと漱石文化振興会、熊本大学文学部附属漱石八雲教育研究センターの協力でお送りします。

<朗読>「こころ」 

すると夏の暑い盛りに明治天皇(めいじてんのう)が崩御(ほうぎょ)になりました。その時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終ったような気がしました。最も強く明治の影響を受けた私どもが、その後に生き残っているのは必竟(ひっきょう)時勢遅れだという感じが烈(はげ)しく私の胸を打ちました。私は明白(あから)さまに妻にそういいました。妻は笑って取り合いませんでしたが、何を思ったものか、突然私に、では殉死(じゅんし)でもしたら可(よ)かろうと調戯(からかい)いました。

<本田>朗読は浜宏奈さんでした。それでは今日は、尚絅高校1年生の浜宏奈さん、山本百音さんと、漱石の長編小説、こころの魅力を探っていきましょう。まず作品の解説を、元高校の国語の先生でした西口裕美子さんにお願いします。

<西口>こころは、1914年、大正3年4月20日から8月11日に、こころ、先生の遺書として朝日新聞に連載された長編小説です。新聞ではそのタイトル通り、先生の遺書から始まったこの小説は、単行本として出版された際に、〈上〉「先生と私」、〈中〉「両親と私」、〈下〉「先生の遺書」というように3つに分割し順番を変えました。また、この本の想定は、漱石自身の手になるもので、懲りに凝ったものです。それだけ思い入れの強い作品だと言えるでしょう。なおこころは、岩波書店が出版した最初の書物です。内容を大まかに言うと、〈上〉「先生と私」は2人の出会いから始まります。先生宅に訪れるうちに奥さんとも親しくなった私に、先生は謎の言葉を投げかけます。漱石はここにいくつもの伏線を貼ります。〈中〉「両親と私」には重い病気の父を案じて田舎に帰省する私が描かれます。父の最後が目の前に迫っているにもかかわらず、先生からの分厚い手紙を手にした私は、父や家族を置き去りにして東京に帰ってきます。〈下〉「先生の遺書」は教科書にも取り上げられる箇所で衝撃的な内容です。ここでは先に示した伏線がどんどん回収されていきます。そして読者にその後の私や奥さんをはじめとする心という作品のそれからを全く示さないままに終わるのです。心を持つがゆえに悩み続ける人間の寂しさ、苦しみ、悲しみを描き、100年以上たった今でもまだ多くの人々に読まれている漱石の代表的な小説、後期三部作の3番目の作品です。漱石の死の2年前、47歳の時の作品です。

<本田>ではここからは3人で作品の魅力や感想についてお話ししていただきましょう。

<西口>はい、山本さん、浜さんよろしくお願いします。

<高校生>よろしくお願いします。

<西口>お二人は1年生ですよね。

<高校生>はい。

<西口>ということは教科書でまだ心っていう作品はやってないということでしょう。初めて読みましたか?

<山本>私は初めてです。

<西口>私も読んだのはつい最近です。

<西口>2人でこれをやろうよっていう風になったのはなぜかしら。
浜さんまず聞こうか。

<浜>2人とも夏目漱石の作品にきちんと本を手に取って読んだのがこころだったのと、国語の授業の時によくお勧めされていたので、それで読んでみたいなと思ったりしたのがきっかけです。

<西口>このこころはどこが面白かったんですか?山本さん教えてください。

<山本>先生の性格が好きで、猫みたいにちょっと気まぐれなところが魅力的だなと思って、もうすっごい好きですね。

<西口>すごい好き。こんなに優柔不断って悪い言葉で言えばそうなんだけど、山本さんからすると猫みたいに変わる心が好きという余裕派ですな。浜さんはどうですか?どこが面白かった?

<浜>私はこの構成が面白くて、〈上〉、〈中〉のところで先生の言動とかから伏線をたくさん張り巡らせていて、それで〈下〉の遺書のところで全て回収していって、そこから先は描かれることなく遺書で終わるっていうのが、すごく書き方として印象に残りました。

<西口>確かに。なんで?どうして?って思わせておいて、最後にこれだったのねと思わせて、最後はブツッと切るというね、そこがやられたっていう感じがするね。じゃあここに出てきた人たちのセリフなり行動なり印象に残っているところはどういうところですか?じゃあ山本さん。

<山本>先生とKが一緒に遠くの方へ旅行に行くシーンがあるんですけど、そこでKと先生の友情を描くことによって、お嬢さんとの三角関係がより濃く映し出されていて、すごくいい場面だなと思いました。

<西口>三角関係なんですよね。三角関係については山本さんはどんなことを思います?

<山本>三角関係について…。

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