不登校のはずの娘が「長期病欠」扱い 明確な基準なく、学校が「総合的に判断」 数字に表れない〝隠れ不登校〟も存在か

熊本日日新聞 | 2022年12月21日 07:00

長女の長期欠席の理由が「病気」とされていたことに不信感を抱く父親=熊本市

 「不登校のはずの娘が教育委員会には『病気』で長期欠席と報告されていた」。長女が熊本市立中学を100日以上欠席している父親が「SNSこちら編集局」(S編)に声を寄せた。学校が欠席理由を「不登校」ではなく「病気」と報告していたことが分かり不信感を抱いているという。取材すると、不登校か病気か現場の判断基準は曖昧で、数字に反映されない〝隠れ不登校〟も存在することをうかがわせた。

 文部科学省は、心理的な要因などで年間30日以上欠席することを不登校と定義。病気や経済的理由などは除外している。

 父親によると、長女は複数の教員に対する苦手意識から引きこもるようになった。学校は毎月、長期欠席している児童生徒について市教委に定例報告を行っているが、父親が市教委に報告内容の開示を求めたところ、欠席の主要因は病気と記されていた。

 父親は「娘はカウンセリングで社交恐怖症と言われたことはあるが、長期欠席の発端は先生との人間関係だった。原因が子どもだけに押し付けられている印象を受ける」と指摘。不登校の場合、要因には「教職員との関係をめぐる問題」という項目もあるのに、そこに位置付けない学校の態度はおかしいと訴える。

 長女が在籍する中学の校長は取材に、「文科省は生徒の『心の病』も病気に含まれるとしている」とし、病気かどうかは「ケースごとに総合的に判断している」と答えた。不登校とした生徒が心身の不調を抱えている例もあり「正直、不登校と病気の線引きはグレーだと思う」とも話した。

 熊本市教委も、不登校かどうかの判断が学校ごとに異なる可能性はあり得ると認め、「欠席理由に関係なく同じサポート体制をとっている」と説明。欠席理由が実態を適切に反映しているかどうかは「心の病と不登校を分けるのは難しい部分がある。熊本市に限らず全国的な問題だ」とした。

 文科省は、欠席理由を適切に判断するため「学校は保護者らとしっかりコミュニケーションを取るべきだ」と強調する。ただ、県内の学校関係者の間には「そもそも心の病と不登校を分けることに意味があるのか」と疑問の声もある。

 県教委によると2021年度、県内の小中高校の長期欠席者8131人のうち2割弱の1471人は病気が理由とされる。不登校は過去最多の4729人に上った。(立石真一)

不登校の主要因、最多は本人の「無気力、不安」?

 文部科学省は不登校を心理的、情緒的、身体的、社会的な要因・背景によって登校しない、できない状況にあり、年間30日以上欠席した場合と定義しており、病気や経済的理由、新型コロナ禍での感染回避による長期欠席は除いている。

 不登校については考えられる要因13項目を「学校」「家庭」「本人」に分けて分析。2021年度調査で小中学生の主要因の上位2項目は「無気力、不安」の49・7%と「生活リズムの乱れ、あそび、非行」の11・7%で、いずれも本人関係だったとする。

 一方で「いじめ」や「学業の不振」など学校関係の8項目では、最も高い「いじめを除く友人関係をめぐる問題」でも9・7%。「教職員との関係をめぐる問題」は1・2%、「いじめ」は0・2%だったとしており、調査が実態を十分に反映していると言えるのか評価が分かれそうだ。

 家庭関係3項目で割合が高かったのは「親子の関わり方」の8・0%だった。

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