子どもの体も心も笑顔に 合志市のNPO法人が有床診療所 医療的ケア児の家族を支援

熊本日日新聞 | 2022年6月5日 07:28

呼吸を補助する看護師らの研修に立ち会う島津智之さん(右)=合志市

 障害児の在宅医療や通所支援などを手がける熊本県合志市の認定NPO法人「NEXTEP(ネクステップ)」が1日、同市合生に「穂っぷこども在宅&心身クリニック」を開院した。有床診療所で、全国的に不足する医療的ケア児の「医療型短期入所」に対応。国が病床削減を進める中、県が特例で設置を認めた。子どもたちの体と心の診療を担い、「子どもが笑顔になれる社会」を目指す。

 「本人や家族が来て良かったと思えるケアを心がけて」。5月25日、同法人の理事長で小児科医の島津智之さん(45)が、開院に向けた研修に参加した看護師ら12人に呼びかけた。

 平屋約428平方メートルに、診察室と短期入所用の病床7床、浴室などを設置。寝たきりの子も楽しめるよう、壁と天井に動物や魚など子ども好みの絵が描かれ、内装は木を基調とした。職員は「医療機関らしくない、温かみのある楽しげな雰囲気にしたかった」と口をそろえる。

子ども向けに天井や壁に絵が描かれた「穂っぷこども在宅&心身クリニック」の室内

 同院は、たんの吸引や胃ろうなどが必要な医療的ケア児の訪問診療に取り組むほか、看護師が24時間常駐するため宿泊が可能な「医療型短期入所」に対応する。島津さんは小児科と精神科両方を担う「子どものこころ専門医」で、臨床心理士や社会福祉士とともに心に不調のある子どもの外来診療も受け付ける。

 国が病床削減を進める中、県内の病床数は既に基準数を超えているため、県は原則新設を認めていない。ただ、今回は県医療審議会などが同院を地域に必要な「特例診療所」として初めて認めた。

 医療型短期入所は、医療的ケア児を介護する家族のレスパイト(休息)が主目的。医療的ケア児は全国的に増加しておりニーズが高まる一方、人手がかかるなどの理由で受け皿が不足。県医療政策課によると菊池郡市の合志、菊池、菊陽、大津の2市2町内も常に満床で、緊急時にすぐ利用できない状況だったという。

 同院の短期入所は、系列の通所事業所と連携し、日中も手厚い療育を提供する。子どもを預けることを後ろめたく思う家族が多く、島津さんは「本人にも家族にも良い環境をつくりたかった」と力を込める。

 島津さんは以前勤めていた総合病院で、新型コロナウイルス禍で短期入所の受け入れが縮小し、子どもや家族が我慢を強いられる状況を目にしてきた。「総合病院ならではの事情はあるが、どんな時も子どもを優先する診療所があっても良い」と考え、独立を決断した。

 ネクステップを立ち上げて22年。島津さんは「目の前の困っている子どもをどうにかしたい」と活動を続ける。医療的ケア児らを取り巻く環境は課題も多いが、「長年やってきたからこそ、当事者のニーズに合う施設が作れた。子どもたちと向き合いながら解決策の引き出しを増やしていきたい」と強調する。(深川杏樹)

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