「僕はゆっくりと絶望した」 高2で難病、徐々に視野が失われ パラスイマー富田宇宙選手

昨年夏、初めてのパラリンピック東京大会に出場しました。
「遅咲きのニュースター」。NHKが僕につけたコピーです。現在32歳。五輪の競泳代表で最年長だった入江陵介選手が僕より1学年下なので、競泳選手としては確かに少々年配かもしれません。でも僕に「遅咲き」という感覚は全くない。パラ競泳を始めたのは8年前で、今回が2度目のチャレンジですから、むしろ早咲きと言ってほしいくらいです。
16年前、宇宙飛行士を夢見て進学した済々黌高で、2年生の時に目に障がいがあることが分かりました。「網膜色素変性症」。徐々に視野が失われていく難病です。
障がいの進行はとてもなだらかで、数カ月ではほとんど分からない。なんとなく文章を読むことに時間がかかるようになったり、自転車でぶつかることが増えたり、球技が難しくなったり…。一つ一つはわずかなことだけど、それがもう一生戻らないという現実に、僕はゆっくりと絶望していきました。
よくインタビューなどで、障がいがあると知った時のショックについて尋ねられますが、実は本当につらいのは障がいが分かった瞬間ではなく、それから何年もいろいろなことができなくなっていく自分と向き合い続ける日々なんです。
大学4年生で白い杖[つえ]を初めて購入し、それを使いながら帰った日のことは今でも鮮明に覚えています。周囲から向けられる「障がい者」に対する奇異の視線。でも僕はもうこれがないと歩けない。情けなく、恥ずかしく、どこまでもみじめで。歩いていたら涙が自然とあふれてきて、何度も立ち止まってはそれを拭いました。
がむしゃらに生きた16年 新たな自分、少し肯定できる
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