過去の大地震教訓に備えを 愛知の元住職、2度経験
太平洋戦争末期、愛知県東浦町にある寺の元住職本田真哉さん(88)は、2度の大地震を経験した。報道管制が敷かれ「隠された地震」とも言われる、昭和東南海地震(1944年12月7日)と三河地震(45年1月13日)だ。発生から80年。南海トラフ地震への警戒感が高まる中、備えるよう訴えている。
了願寺(東浦町)の住職の次男として生まれた。国民学校2年生で、昼食を終えて寺の庫裏で宿題に取りかかろうとした時、マグニチュード(M)7・9の昭和東南海地震が起きた。慌てて外に逃げると、高さ3メートルの石灯籠がそばに倒れてきて、命を落としかけた。余震が続き、復旧もままならない中、さらに三河地震(M6・8)が発生、本堂が傾いて瓦屋根が落ちた。
学校で、先生から地震についての説明はなかった。「戦意を下げるような後ろ向きなことは言えなかったのではないか」。報道管制下で、詳しい被害状況も伝わってこなかった。
戦後、住職を継いだ本田さんは、集まった檀家らに説く法話の中で、戦争や地震の被災経験も伝えた。地震の予備知識がなく慌てることしかできなかった反省を踏まえ、日頃から防災意識を持つよう呼びかけてきた。