親、パートナーを頼れない…若い妊産婦の住まい支援 NPOトナリビト、熊本市でシェアハウス 自立への基盤づくり目指す

熊本日日新聞 2024年9月4日 06:05
トナリビトが10~20代の妊産婦向けに設けたシェアハウス「みらいはうす熊本」=8月、熊本市
トナリビトが10~20代の妊産婦向けに設けたシェアハウス「みらいはうす熊本」=8月、熊本市

 若者の居場所づくりなどに取り組む認定NPO法人トナリビト(熊本市)は7月中旬、京都市の一般社団法人の委託を受け、親やパートナーを頼れない事情がある10~20代の妊産婦を対象としたシェアハウスを熊本市内に設けた。民間組織が妊産婦の住まいを支援するのは県内で初めて。

 シェアハウスは、貧困や虐待問題に取り組む団体への助成事業などに当たる一般社団法人サウンドハウスこどものみらい財団(京都市)の新事業。財団によると、全国では人工妊娠中絶が年間10万件以上ある。子どもを産みたくても産めない女性の支援を目的に、熊本県内の行政や医療機関との連携実績があるトナリビトに運営を委託した。運営費は財団が賄う。

 県内では、福田病院(熊本市)が県の補助事業で、熊本市社会福祉協会熊本乳児院が熊本市の委託で、支援が必要な特定妊婦らに一時的な住まいを無料で提供している。ただ、産後数カ月で母子生活支援施設などに移るケースもあり、財団とトナリビトは長期間同じ場所で安心して過ごせる環境が必要と考え、産後1年まで利用できるシェアハウス設立に動いた。

 親を頼れない若者の居場所や緊急シェルターの運営に取り組んできたトナリビトの山下祈恵代表(37)は「妊娠しても出産を諦めて中絶する女性を見るのが悔しかった」と打ち明ける。「産む前も産む時も産んだ後も女性を孤立させないようにしたい。シェアハウスのスタッフが出産時に立ち会えるよう、医療機関に働きかけたい」と話す。

 シェアハウスは「みらいはうす熊本」。個室2部屋があり、ベッドや授乳用のチェアを備える。キッチンやリビング、浴室、トイレは共同で、食事や洗濯といった家事は基本的に入居者自身が担う。家賃や光熱水費、食費、通信費を含め月5万円の支払いが必要で、収入に応じて免除や減額も検討する。

 つわりなどで体調が優れない場合、スタッフが手伝う。妊娠出産に関する相談のほか、受診や行政手続きにも同行する。産後の夜泣きへの対応のほか、就労や保育園探しもサポートし、女性の自立に向けた基盤づくりを目指す。

 財団の中島尚彦代表理事(66)=東京都=は「子どもが生まれた後、母子が安心できる環境を整えることが重要と考えている。子どもが成長するまで見守っていく」と話している。

 シェアハウスは現在、1人が入居し、残り1部屋も近く埋まる見通しという。受け入れ数をどう増やしていくかが今後の課題だ。相談はトナリビトの公式LINE(ライン)から。(横川千夏)

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