熊本県の最低賃金、時給952円答申 2024年度、地方審議会 上げ幅は過去最大54円
熊本地方最低賃金審議会(会長・倉田賀世熊本大教授)は9日、2024年度の熊本県最低賃金を現行から54円引き上げ、時給952円にするよう金成真一熊本労働局長に答申した。時給方式になった02年度以降で最大の上げ幅。答申通りに決まれば、初の時給900円台となる。
54円の上げ幅は、国の中央最低賃金審議会が示した目安額から4円の上乗せ。倉田会長ら有識者の公益委員が提案した。理由として、①九州の他県と比べて物価が高く実質賃金の低下が続いている②企業の景況をマイナスと判断する材料がない③県内ハローワークでの求人の最低時給が996円-を挙げた。
労働者側と使用者側が当初提示した金額には120円の開きがあり、専門部会で4回の審議を重ねたものの、溝が埋まらなかった。委員全員の統一見解を出すことを断念して採決した結果、倉田会長を除く審議会委員13人のうち8人の賛成で決まった。使用者側は5人全員が反対した。
次回の審議会で熊本労働局長に、中小企業の生産性向上や価格転嫁対策への支援を求めることも決めた。
熊本労働局は答申への異議申し立てを26日まで受け付け、10月5日の発効を目指す。(丸山伸太郎)
◆倉田賀世・熊本地方最低賃金審議会長 国の統計によると、2021年度以降は実質賃金が大きく下がっており、物価の上昇にとても追いついていない。一定程度の賃上げをする必要がある。人件費が高くなって困る企業が出ないように支援策を求めたい。
◆岩永秀則・県経営者協会専務理事 国の審議会が示した目安額を4円上回る結果に言葉が出ない。4円は小規模事業者にとって小さい額ではない。賃上げで経営を諦める事業者が出ないよう、国には補助金など中小企業が利用しやすい支援策を重点的にしてほしい。
◆山本寛・連合熊本事務局長 物価上昇などで生活費がどのくらいかかるのか公的なデータを使って訴えたが、労働者の生活を考えると不満。ただ、過去最大の上昇幅になったことは評価する。公労使かかわらず、企業が価格転嫁できる体制をつくることが重要だ。
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