くまTOMO編集室は5月25日、南阿蘇鉄道の観光トロッコ列車1両を貸し切り、沿線の絶景やおもてなしを楽しみながら熊本地震からの復旧の道のりをたどる体験イベントを開きました。くまTOMOサポーター家族ら約20人がガタン、ゴトンと客車に揺られながら、初夏の阿蘇を目いっぱい体感しました。(河北希)
青空に恵まれたこの日、列車が出発する高森駅は多くの観光客でにぎわっていました。雄大な阿蘇五岳と南外輪山に囲まれた南郷谷を東西に走る、総延長17.7キロの南阿蘇鉄道。8年前の熊本地震で鉄路や鉄橋が甚大な被害を受け、中松-立野間10.6キロで不通が続いていましたが、昨年7月15日に全線開通を果たしました。地域に元気を届ける「復興の象徴」になっています。
広々としたホームからトロッコ列車「ゆうすげ号」に乗り込み、職員らに見送られていざ発車。貨物の輸送用車両を改造して作られた客車は窓がなく開放感たっぷりです。心地よく吹き抜けるさわやかな風を受けながら、田園地帯や水源を走り抜けました。
車掌が、風景や各駅の見どころなどを軽妙な語り口でアナウンス。沿線では、田植え中の農家が手を振ってくれたり、駅のホームから客車に〝乱入〟してシャボン玉を飛ばす人がいたり。熊本市立壺川小4年の髙橋来実さんは「駅ごとに違う特徴があって、楽しかった」と笑顔でした。
真っ暗なトンネルを抜けると、地震後新たに架け替えられた第一白川橋りょうに差しかかります。高さ約60メートルから立野峡谷を見下ろす絶景ポイント。列車は速度を落とし、新緑に包まれたダイナミックな自然に歓声が上がりました。
終点の立野駅では、地震で被災したときのことや、復旧過程を学ぶ「特別授業」がありました。レールがゆがんだり、トンネルに亀裂が入ったり…。復旧には莫大な費用が見込まれ、鉄道部長の中川竜一さんは廃線になるかもしれないと思ったといいます。
「通学や買い物、通院、観光など、地域に欠かせない鉄道を守ろうと、関係者が一生懸命取り組んだ。全国からの多くの応援もあって、全線開通を遂げた」と中川さん。「こうしてまたすばらしい車窓の景色を見ることができ、最後まで諦めずに頑張り続けてよかった」と喜びを語りました。真剣な表情で耳を傾けた子どもたち。〝地域の足〟の大切さをかみしめ、普通列車で高森駅に戻りました。
高森駅舎では、この夏オープン予定で整備中の交流施設を特別見学。町役場の職員が「普段から町民と観光客が集い、交流を重ねることで、いざというときの防災拠点にしたい」と紹介しました。大きな広場や非常用コンセントなどが備えられ、避難所としての活用も想定。地震の教訓が生かされた空間となっています。
トロッコ列車で鉄路を楽しんだ後、高森駅の車両基地に特別に立ち入り、車両清掃を体験しました。普段は近寄ることのできない大きな洗車機を間近にして、子どもたちは目を丸くしていました。
洗車機に停車していたのは、4月下旬にデビューしたばかりの新型「MT4000形」。昨年の全線開通と同時に実現したJR線への乗り入れに対応した車両となっています。
車両に乗り込み、まずは感謝の気持ちを込めながら窓や手すりを拭き上げました。その後、代表の子どもが洗車スイッチを押すと、「ゴォー」と音を立てて外のブラシが作動。「すごーい」「雨の中を走っているみたい」と大盛り上がりです。
車両がきれいになったところで、職員が車内設備などを解説してくれました。運転席に入ったり、乗客が必要に応じてドアを開閉できる半自動システムのボタンを触ったり。車いすスペースやスロープを備えたバリアフリー仕様、連結した際に車両を行き来できる貫通扉など、興味深く見入っていました。
今回は、トロッコ列車に乗せてもらいました。そして、トロッコが動いてる時に外輪山の山々や水田、シラサギ、田植え作業、赤牛やヒツジなどさまざまな景色が見れました。天気もよくとってもきれいでした。大きなダムとかがあって、ダイナミックですごくて感動しました。途中の駅でシャボン玉で出迎えてくれる駅のかたや地域の人たちが手を振ってくれて、そういう交流も楽しかったです。
鉄道会社の人から熊本地震からの復興の話を聞き、わたしの家も大規模半壊で被災したので、地震の事を思い出しました。最後は車両の掃除を体験しました。大きな洗車機で電車を洗車する作業を車両の中から見れて、連結や運転席や、自分で車両を開閉できるボタンがあるのを駅の人に教えてもらいました。
阿蘇が大好きです、また乗りたいです。(熊本市立西原小5年、藤元結心さん)
駅の人や田植えをしてるトラクターのおじさんが手を振ってくれたのでうれしかったです。トンネルの中に入った時は電気が消えて真っ暗になり、びっくりでした。トンネルを抜けると橋が出てきました。川がすごく下に見えてとても怖かったです。最後に車両の掃除体験をしました。お父さんと車の洗車をした時に似ている大きな洗車機で車両を洗うのがとても面白かったです。(熊本市立託麻北小2年、谷光樹さん)
それぞれの駅に特徴があって面白かったです。特に忍者がお菓子を投げてくれたのが楽しかったです。トロッコから見る景色もとてもきれいでした。
地震が起きた時は小さかったから覚えていないけれど、話を聞いてこんなにすごかったのかと知ることができました。列車の洗車は、車の時と同じように窓の外をブラシが動いて行くのを中から見れたのが面白かったです。(熊本市立壺川小4年、髙橋来実さん)