心奪う繊細な美しさ…藤岡さん(熊本市)作品、中学美術の教科書に 紙とはさみの職人技
熊本市南区の藤岡祐機さん(30)が手がけた紙を使った作品が、来年度の新中学1年生から使用する美術の教科書「令和7年度版 中学校『美術1資料』」(光村図書)に掲載される。祐機さんは紙に1ミリにも満たない微細な切り込みを入れ、数々の独創的な造形を生み出してきた。教科書では、作品のほか制作する様子を収めた動画も紹介する。
自閉症で言葉を発さない祐機さん。母の浩子さん(60)によると、2歳ぐらいで紙を手で破り始めると、6歳からはさみを使い始めたという。最初は平面の切り紙だったが、11歳頃から現在の立体的な作品へと〝進化〟。独自の芸術性が注目され、美術教育を受けていないアーティストによる「生[き]の芸術 アール・ブリュット展」など国内外の展覧会に出品してきた。
素材はコピー用紙や折り紙、チラシなどさまざま。市販されている普通のはさみを使い、紙に細い切り込みをくし状にサクサクと入れていく。切り込んだ部分はクルクルとねじれ、紙の表と裏の色が交互に重なるように見えて美しい。まさに職人技だ。「祐機にとってはさみは、手の延長のような存在だと思う。どこまで紙を細く切れるのか、実験するように毎日紙を切っている」と浩子さん。
教科書への掲載を決めたのは、光村図書の吉田史編集長(46)。2020年に東京芸術大学大学美術館で開かれた特別展で、祐機さんの作品に出合った。「紙を使って、ここまで繊細で美しい作品を生み出せるのかと驚き、心を奪われた」
作品は教科書の「紙でつくる」というコーナーで取り上げられる。「紙という身近な素材が持つ無限の可能性を感じ取り、美術の世界はボーダーレスであることも実感してほしい」と吉田編集長。QRコードを読み込むと、20年に熊本市現代美術館で開かれた「ライフ 生きることは、表現すること」展の時に制作された祐機さんの紹介動画を見ることができる。
浩子さんは「どこの家にもある紙とはさみで制作している。作品を見て、『私も作ってみようかな』という気持ちになって、楽しんでくれたらうれしい」と話している。(緒方李咲)
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