離島振興の起爆剤に期待 天草市・御所浦恐竜の島博物館 化石学習が好評 2カ月で8千人 交通手段確保には課題も
天草市御所浦町の市立御所浦恐竜の島博物館は開館から2カ月がたち、想定を上回るペースの来館者でにぎわう。島振興の起爆剤として期待される一方、地域住民も利用する交通手段の確保には不安が残る。離島ならではの課題を抱える中、関係者は島民の生活への影響を最小限にしながら〝博物館効果〟の最大化を模索している。
博物館は、市立御所浦白亜紀資料館を建て替え、機能を大幅に強化して3月20日に開館した。天草地域で見つかった化石を中心に約2千点を展示。白亜紀(約1億年前)の恐竜化石を生息環境ごとに見せるのが特長で、大型恐竜の等身大複製骨格なども並ぶ。
博物館によると、5月22日までの来館者数は8555人で、ゴールデンウイーク(GW)の土日祝日に3329人が来館。博物館の沢村亮二課長補佐(51)は「土日だと7、8割が小学生くらいの子どもがいる家族連れで、平日は年配の方が多い。目標の年間3万7千人を少し上回るペースで、ほぼ順調」と満足げだ。
天草の化石コーナーや大型恐竜の模型が人気だが、想定以上に好評なのが、化石や地層の特徴を題材に研究者の視点を学べる12種のワークシート。来館者の1割程度が挑戦しているという。
廣瀬浩司学芸員(51)は「自分たちが考えた展示を楽しんでくれて、学芸員冥利[みょうり]に尽きる。白亜紀資料館時代に比べ、じっくり見てくれる人が多い」と喜ぶ。博物館近くでできる化石採集体験も、来館者の2~3割が楽しんでいるという。
住民も博物館の開館を地域活性化につなげようと盛り上がる。博物館前の物産館「しおさい館」は、スイーツやお土産などを開発。恐竜をかたどったクッキーなどを載せて化石採集をほうふつさせるソフトクリームが観光客に人気で、GWまでに800食を売り上げた。物産館の運営を担う株式会社「御所浦未来島」の橋本美和代表は「島をまるごと体験して喜んでもらえるよう、官民一体となって地域活性化に取り組みたい」と意気込む。
一方で、離島ならではの課題が交通手段の確保だ。博物館は船や道路の混雑回避のため観光客には車両での来島を控えるよう呼びかけ、1時間の入館者を150人以内の事前予約制にするなどオーバーツーリズム対策を取っている。しかし、集中する時間帯を見通すのが難しいため、開館直後は船に乗れない「積み残し」が発生した。
これを受け、同市御所浦支所が委託したあまくさ海上タクシー協会は、GW中の土日祝日に、天草市倉岳町の棚底港から海上タクシーを運航。定期船に乗船できなかった人を乗せて、多い日で5隻を運航し、積み残しを解消した。
同支所は、混雑が想定される夏休み期間中に向けて協会と対応を協議中。アクセス向上のほか、家族連れ以外の観光客も呼び込むため、烏[からす]峠展望所など観光スポットの整備、周知も強化する考えだ。
崎田博之支所長は「天気や曜日によって来館者数が増減するため、民間事業者も観光客向けの態勢を整えにくい」と課題を挙げた上で「御所浦の良さを知ってもらうため、島での滞在時間を延ばしたい。オーバーツーリズムにならないよう、住民や民間事業者と協力して取り組んでいく」と話した。(鬼束実里)
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