新しい総統が誕生へ!台湾の選挙事情を紹介します【台湾ってこんなトコVol.6】
■選挙期間特有の台湾社会の様子を現地からリポート!
1月13日に投開票が行われ、民主進歩党(民進党)候補の頼清徳氏の当選で幕を閉じた台湾総統選。
台湾では1996年に初めて直接選挙による総統選が行われ、今回が8回目の選挙でした。頼氏は、今年5月20日に新たな総統に就任する予定です。
台湾の有権者は選挙への関心が強く、候補者は投票日が近づくと頻繁に集会を開き、メディアの報道もヒートアップ。
選挙が自然と台湾市民の生活の一部になっていきます。
連載の第6回は、選挙期間特有の台湾社会の様子を皆さんにお伝えしたいと思います!
■街の至るところに選挙広告
台湾の県・市の議員や首長から、立法委員(国会議員)、総統まで、選挙が近づくたびに街の至るところに関連の広告が登場します。
その場所は工事現場のフェンスやビルの外壁、バスやタクシーの車体などさまざま。広告の形態も看板やパネル、旗など多種多様です。
候補者は自身の顔写真やスローガンをアピールすることで有権者への浸透を図ろうとします。
ただ、近年台湾で環境保護の意識が高まる中、こうした選挙広告が選挙後に大量の廃棄物になることに関心が寄せられています。
しかし、これまでの「習慣」を一朝一夕に変えることは難しいのか、今回の総統選でも選挙広告が減少する傾向は見られなかったように思います。
■選挙集会はまるでコンサート?
総統選を例に挙げると、候補者は投票日の半年ほど前から台湾の各地で選挙活動を展開します。
市民が参拝する廟(びょう)の行事に参加したり、市民向けに食材を販売する市場を訪れ、支持を呼びかけたりするほか、大学のキャンパスで講演することもあります。
幅広い世代の有権者と身近に接することで支持の拡大を図ります。
投票まで1カ月を迎えると、大規模な集会を次々と開催します。政党によっては支持者を動員しているとされ、会場の雰囲気を盛り上げようとします。
大規模な集会は一般的に2~3時間行われます。候補者が最後に登場するまで立法委員や地方議員が順番に応援演説を行うほか、ステージ上で歌唱やダンスといったパフォーマンスが披露されます。
こうした選挙集会は開催する政党や候補者、集まる支持者の年代などによって会場の雰囲気が異なります。
勢いよく盛り上がる集会もあれば、比較的穏やかなムードの集会もあります。
■候補者のグッズ販売も
選挙活動の資金を確保するため、各政党は選挙期間に募金活動を行います。
同時に候補者のグッズも販売し、PRを図っています。
今回の総統選の関連グッズは従来と比べて多様化し、デザイン性が強調されたものが多いと感じました。
候補者の選挙スローガンなどをデザインしたタオルやスタジャン、バッジ、腕時計、コーヒーなどさまざまで、若者らを引き付けようとしているようです。
■台湾人だから分かる政治用語
続けて台湾人、または台湾で長い間生活した人だからこそ分かると思われる政治用語をいくつかご紹介したいと思います。
こうした言葉は辞書には載っていませんが、台湾ではよく知られており、ニュースやネット上によく登場します。
台湾政治への理解を深めたいなら、まずは単語から学んでみましょう!
①色と関連した言葉
【藍緑(青と緑)】
台湾の二大政党である国民党と民進党を指します。両党を象徴する色に起源があり、国民党の熱心な支持者を「藍軍(ラン・ジュン)」、民進党の熱心な支持者を「緑軍(リュー・ジュン)」と呼びます
【白】
近年勢いを増している第三勢力の政党「台湾民衆党」を指します。
政党や派閥、イデオロギーなどにとらわれないことを目標に掲げ、党主席(党首)で総統選に立候補した柯文哲・前台北市長は「藍と緑が闘う泥沼から抜け出そう」と訴えます。
【抹黒】
不実の内容に言及して対立候補を中傷すること。発音は「モー・ヘイ」。
【抹紅】
対立候補を親中派とレッテルを貼ること。発音は「モー・ホン」。
②字面だけでは意味を間違えそうな言葉
【凍蒜】
字面からは中国語のニンニク(大蒜)と関連があるように勘違いしそうですが、実は「当選」の台湾語です。集会では士気を高めるためみんなで「凍蒜」と叫びます。発音は「ドン・スワン」。
【掃街】
候補者が大通りから小さな路地まで歩いて投票を呼びかける行為。発音は「サオ・ジエ」。
【陸戦・空戦】
陸戦は候補者が有権者に接触する選挙活動を指します。空戦はネット上でのアピールを指します。
③一部の政治関係者が使う言葉
【ベン場(ベン=手へんに弁)】
政党が集会に集まった人数や盛り上がりを比較すること。
【棄保】
3人以上の候補者がいる場合、有権者が本命の候補者への投票をやめ、ある候補者を当選させないため、勝てる見込みがより大きい別の候補者に票を投じる行為。
<この記事を書いたのは>
張成慧(チョウ・ナルエ)
NNA台湾編集部に勤める30代の台湾人女性。大学時代に交換留学生として日本に約1年間滞在して以来、日本が恋しく年に2回のペースで各地を訪ねています。旅やアート作品などを通じて、自身の感性が磨かれるものごとを見つけるのが好き。
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