「動画撮ってるから」と後輩 数カ月後、身に覚えのない請求書が… 手軽なオンライン決済 日常に潜む危険
「TikTok(ティックトック)の動画撮ってるんで、いいっすか?」。熊本市の30代男性は昨年春、一緒に遊んでいた高校の後輩A(20代)からスマートフォンを向けられた。車の運転中でもあり、されるがままにしていた。数カ月後、男性の自宅に身に覚えのないオンライン決済の請求書が届く。それはオンライン決済が手軽に利用できるようになった日常生活に潜む危険だった。
請求書は、電話番号とメールアドレスがあれば利用できるオンライン決済サービス会社からだった。顔写真と身分証を撮影して本人確認すれば、オンラインで商品を購入した後、コンビニエンスストアなどでの後払いで買い物ができる便利なサービスだ。
男性が調べると、自分のアカウントが勝手に作られ、約15万円のスマートフォンが分割払いで購入されていた。登録していたメールアドレスを調べると、Aにたどり着いた。
Aを問い詰めると不正を認めた。勝手に顔写真を撮り、コンビニに行く際などに車内に置きっぱなしだった財布から免許証を抜いて撮影、男性になりすましてアカウントを作ったようだ。男性は請求額全額をAに何とか支払わせたが、Aの周辺には同様の被害に遭った知人が複数いた。
熊本市の20代男性もその一人だ。昨年5月、当時ルームシェアをしていた友人の紹介で1カ月近くAを家に泊めていた。3カ月後、30代男性とは別の決済サービス会社から1万5千円ほどの請求がありAの仕業と分かった。家に泊めていた間に顔写真や身分証の写真を撮られたらしい。
被害に遭った二人は警察に相談しているが、関東地方にいるとみられるAとは現在、連絡が取れなくなっている。さらに、Aの周辺にはこうした手口を広めている人間もいるという。
30代男性に請求した会社に取材すると、「本人確認の顔写真は複数の角度から時間をかけて撮影する仕組みなので、そういった手口があると聞いて驚いている」。対策としては「不審な動きでカメラを向けられた場合は、気を付けてもらうしかない」とした。
国民生活センター(東京)は「どんなに親しい人でも身分証を見られる状態にしないように」と呼びかけている。加えて、身に覚えのない請求があった場合は少額であっても、支払う前に最寄りの消費生活センターに相談するようアドバイスする。(堀江利雅)
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