「帳面消し」って共通語じゃないの? 実は方言 熊本県民に”衝撃”

熊本日日新聞 | 2020年12月03日 11:34

 「帳面消しをするな!」。表面上だけを取り繕う行いをして、そう怒られた人も多いのでは? この「帳面消し」が熊本弁だと言う人がいる。「帳面」も「消し」も共通語(標準語)のはずだが、真相は…。

「帳面消し」が使われた熊日紙面の見出しや記事

 熊日「SNSこちら編集局」(S編)が11月末まで実施した「熊本弁検定」は7千人以上から回答が寄せられたが、好きな熊本弁に「帳面消し」を挙げた人が1人(40代女性)だけいた。「帳面消しは熊本弁です」と自信満々だ。

 全20巻の「日本国語大辞典」を引くと…、「帳面消し」はない。「帳面が消える」「帳消し」はあったが、どちらも「債務がなくなる」などの意味で、ニュアンスが異なる。

 「ガス抜きでも『帳面消し』でもありません」。2001年、相良村で開かれた「川辺川ダムを考える住民大集会」では、ダム賛成派と反対派が入り乱れた約3千人の聴衆を前に、当時の潮谷義子知事が険しい表情でそう強調した。日常会話だけでなく、こうした公式の場面でも「帳面消し」は使われる。

 熊日紙面では「『帳面消し』にすべきでない」などと社説の見出しでも用いられたことがある。データベース日経テレコンで「帳面消し」が使われた全国の記事を検索すると、00年以降で77件が該当。最多は熊日の28件、次いで長崎新聞、西日本新聞の各18件、佐賀新聞4件、全国紙の朝日、毎日、読売の各紙が各3件だった。

 このうち見出しにも使っているのは熊日と長崎のみだ。全国紙は、川辺川ダムや水俣病、諫早湾干拓問題など熊本・長崎関連の記事が目立ち、かぎかっこ内の話し言葉が中心。「帳面消し」が新聞で一般用語的に用いられているのは、九州、それも有明海沿岸の限られた範囲であることが明らかだ。

 日本方言学が専門の国立国語研究所の大西拓一郎教授(東京)も「帳面消しは初めて聞く言葉。意味も分からない」と話す。20万語以上を収録する「日本方言大辞典」にも掲載はなく、同教授は「熊本方面で生み出された言葉ではないか。最初は話し言葉だったが、次第に学校などフォーマルな場面でも使われ出し、新聞記事にも登場するようになった」と推測する。

 由来は分からないが、「帳面消し」は熊本弁か熊本周辺の方言である可能性が高いようだ。熊本弁の達人なら何か知っているのではと肥後にわか「キンキラ劇団」のキンキラ陽子団長(76)に尋ねると、「はっ? 標準語じゃなかっですか。そらぁ、ことし一番たまがりました」と衝撃を受けた様子だった。(岩下勉)

 ◇「熊本弁検定」の結果は6日と8日の紙面で特集します。

◆「離合」は広島以南で使用

 車がすれ違う「離合」や方向指示器を指す「アポロ」も、好きな熊本弁に挙がった。

 「離合」は、日本国語大辞典に、鉄道員用語として「単線区間で、上り下りの列車が行き違うこと」との記載があり、車のすれ違いとも意味が近い。

 情報サイト「Jタウンネット」の全国アンケートによると、車のすれ違いを「離合」と言うと6割超が答えたのは、沖縄を除く九州7県と、山口、広島、愛媛、高知、京都の計12府県。中部、北陸以北はほとんど使われていなかった。広島以南では「離合」が通じるようだ。

 「アポロ」は昭和30年代に全国的に流行した矢羽式方向指示器「アポロウインカー」が語源とされ、熊本の方言というわけではなかった。

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