「自分の言葉で語る」「古里熊本はまさに根っこ」 武田真一アナウンサーが語るフリー転身 挑戦へ夫婦で個人事務所 

熊本日日新聞 2023年4月21日 10:30
インタビューに応じた熊日東京支社で阿蘇根子岳の絵の前に立つ武田真一さん。父親の出身地・高森町から望む山並みに「懐かしさを感じる」と語る=東京都千代田区
インタビューに応じた熊日東京支社で阿蘇根子岳の絵の前に立つ武田真一さん。父親の出身地・高森町から望む山並みに「懐かしさを感じる」と語る=東京都千代田区

 NHKを2月末で早期退職したフリーアナウンサー武田真一さん(55)=熊本市出身=は、4月から民放の朝の情報番組で司会を務めている。「個人で挑戦したい」という独立心に火が付いた50代半ばでの転身。「立場や肩書を脱ぎ捨てた個人の言葉に力を感じる」と語る武田さんに、伝え手としての思いや転身の真意を聞いた。(小多崇)

 -フリーへの転身を決断した理由は何ですか。

 「50代半ばになり、これからの人生をどう生きるか考えなければいけないタイミングになった。刺激を受けたのは、この2年間勤務した大阪で出会った町工場の経営者や社会起業家の姿です。大組織に属さず、自分の力で従業員を養い、大企業と交渉し、利益を上げている。しかも社会を良い方向に変えようという志を感じました」

 「おそらく同世代の皆さんの多くが、これからどう生きていこうかと考えていると思う。もちろん考えた上で組織に属して定年後も貢献し、後輩を育てる仕事も大事です。私の場合は、独立して個人で挑戦しようと、今回、夫婦で個人事務所を立ち上げました」

 -民放初の番組「DayDay.」(KKT)が今月スタートしました。

 「身近な話題からニュースまでさまざまなことを取り上げながら、ああでもない、こうでもないとおしゃべりをする井戸端会議のような番組をイメージしています。今、ネット上には乱暴な言葉が飛び交い、何かを語れば炎上するため、意見を素直に発表することへの不安が高まっています。そんな状況がネットだけでなく会社や学校、地域に広がるならば、それは日本の危機だと思っています」

 「一人一人が自分の立場で意見を表明できる前提として、それぞれの意見を社会がちゃんと受け入れてくれる精神的な安全感が求められています。おしゃべりは、新しい価値を創造する意味でも大事です。お互いの意見や立場を尊重し、安心して楽しく話せるおしゃべりのひな型を番組で示したい。時には激しく意見が対立してもいい。ただし論破ではなく、多様な考えや知見を積み上げていくものでありたいですね」

 ─7年前の熊本地震の直後、武田さんがニュース番組の最中に発した「熊本県は私のふるさとです。家族や親戚、たくさんの友人がいます。そのふるさとで多くの方が犠牲になり、そして多くの方々が絶え間なく続く地震におびえながら、また今夜も明かりのない夜を迎えることを思いますと、胸が締め付けられます」とのメッセージが印象に残っています。

 「4月14日夜に起きた前震を受けて、翌15日に取材をして、16日夜にNHKスペシャルを放送する予定でした。しかし、16日未明に本震が起き、取材済みの内容では番組が作れなくなったんです。どうしようかとみんなで考え、制作者として、そしてキャスターの武田として『(被災地の)みなさんと一緒にいます』という立場を宣言する番組にするしかないという結論に至った。苦し紛れの言葉だったんです」

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