捜査と個人情報 取得には明確なルールを

2月14日 09:13

 コンビニやレンタルショップなどで買い物をする際にポイントがたまる「Tカード」の運営会社が、会員の個人情報を裁判所の令状なしに捜査当局に提供していたことが明らかになった。

 Tカード会員数は日本の人口の半数を超える約6700万人。カードは個人の氏名、住所、買い物やレンタルの履歴などが蓄積された個人情報の塊だ。警察や検察は、内部手続きである「捜査関係事項照会」を使って情報提供を要請。運営会社は会員規約に当局への情報提供を明記せず、当局も情報を得たことを本人に知られないよう保秘を徹底していた。

 いつ、どこにいたか、何をしたかといった機微情報が、裁判所など外部のチェックが入らないまま、本人も知らないところで頻繁にやりとりされていることになり、思想信条の自由やプライバシー保護の観点から問題だ。

 さらに、検察当局がスマートフォンゲームの運営会社を通じ、衛星利用測位システム(GPS)機能を使って事件関係者の位置情報を取得している可能性があることや、約290の企業や自治体などが持つ情報の種類や取得の仕方を細かく記したリストを作っていたことも判明。いずれの情報も捜査関係事項照会で取得できるとしていた。

 憲法が保障する「通信の秘密」に関わる携帯電話会社の通信履歴などの取得には令状が必要なため、令状請求を省ける照会でゲーム会社から取得することは脱法的な「抜け道」だ。令状がないままGPSを取り付ける捜査手法については、2017年の最高裁判決が「公権力による私的領域への侵入を伴う」などと深刻なプライバシー侵害を指摘し、違法と認定した。当局が実際にゲーム会社から位置情報を取得していたとすれば許されないことだ。

 刑事訴訟法は捜査について「公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」と規定。回答拒否に罰則はなく、照会書に裁判所の令状のような強制力はない。ただ個人情報を本人の同意なく第三者に提供することを禁じる個人情報保護法も警察などの照会を例外としており、企業の多くは任意に提供している。

 当局は照会によって、防犯カメラ映像や交通機関の自動改札通過記録などを集めており、捜査に必要不可欠な手法となっている。IT技術の進展で、さまざまな情報を組み合わせれば、個人の私生活に深く踏み入ることが可能だ。しかし集めた情報の保管や利用の仕方は分かっておらず、実態はブラックボックス化している。警察官が私的な目的で不正に照会を行う事件もたびたび起きている。

 司法のチェックなしに得られた情報を捜査当局が持ち続けることは、捜査権の乱用や情報漏えいの恐れがあり看過できない。捜査に関連する個人情報取得の要件や手続き、管理・破棄、さらに外部チェックについて明確なルールを早急に定めるべきだ。