温室ガス排出削減 日本は模範を示すべきだ

1月16日 07:06

 国連環境計画(UNEP)が、2008年から17年まで過去10年間の地球温暖化政策について、「失われた10年だった」と厳しく総括する報告書をまとめた。

 報告書によると、分析が始まった08年から17年までの10年間で、地球温暖化の原因となる世界の温室効果ガスの排出量は平均で年1・6%増加し、17年には535億トンに達した。

 「目立った削減対策が取られず、成りゆきのまま排出量が増える」という約10年前のシナリオで予測された排出の伸びとほぼ等しく、具体策が取られないまま10年が経過した現状を裏付けた格好だ。

 それでもなお、日本など主要排出国による温室効果ガスの削減努力は不十分なまま。18年の排出量はさらに増え、過去最高の553億トンにまで達している。

 地球温暖化に歯止めをかけられず、それが原因とされる猛暑や豪雨災害が毎年のように日本列島で繰り返される現実を、日本政府や各自治体、国民一人一人が深刻に受け止める必要がある。

 温室効果ガスの増加に伴う深刻な被害を避けるため、新たな国際的なルールを示した「パリ協定」がこの1月から本格始動した。

 今世紀後半に世界の排出量を実質ゼロにし、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。先進国に削減目標を割り当てた京都議定書と異なり、史上初めて全ての国が目標を掲げて排出削減に取り組むのが特徴で、削減状況を5年ごとに検証して目標の引き上げを促す仕組みも取り入れた。

 ただ、実施ルールづくりで各国の合意ができておらず、世界全体の対策強化に向けて一致した姿勢を示せてはいない。このままいけば気温が約3度上昇すると予想される30年に向け、各国は今年、削減引き上げ目標を再提出しなければならないが、主要排出国のうち中国やインドは消極的で、米国は離脱方針を崩していない。石炭火力発電を推進する日本も後ろ向きの姿勢だが、それでは世界から孤立しかねない。「脱石炭」へかじを切り、模範を示すべきだろう。

 UNEPの報告書は、各国が再生可能エネルギーや省エネの大幅拡大、森林破壊の防止や植林などの対策を大幅に実施すれば、パリ協定の目標達成はまだ不可能ではないという分析も示している。

 こうした中、熊本県をはじめ、地域内で出る二酸化炭素を森林などの吸収量と均衡させて「CO2排出実質ゼロ」を50年に達成すると宣言する自治体が増え始めた。小規模自治体が目立ち、具体策に乏しいという指摘もあるが、温暖化対策をより住民に近づける試みとして歓迎したい。

 地球温暖化が原因とされる異常気象や自然災害が世界で多発。オーストラリアでは大規模な森林火災が発生し、コアラなど野生動物にも甚大な被害が出ている。こうした被害の回避は、その原因をつくりだしているわれわれ人類の責務と言える。「失われた10年」を繰り返してはならない。