10月17日付

10月17日 07:39

 浅葱[あさぎ]色とは淡い藍色のこと。薄い葱[ねぎ]の葉にちなむ。伝統色で平安時代にはその名があったという。羽にほのかな青緑色が浮かぶチョウ、アサギマダラの渡りの季節である▼北海道から沖縄まで見られる普通のチョウらしい。ただ、大集団が突然姿を消すことでも知られていた。移動しているのでは? と羽に印を付ける調査が始まったのは三十数年前。春から初夏にかけて南の島から北上、夏は本州の高原などで過ごし、秋に再び南を目指す珍しい生態が分かってきた▼移動距離は時に2000キロに及ぶ。その間、世代交代を繰り返す。一個体が渡る鳥のそれとは質が異なる。経験も地図もないままなぜ、どうやって海を渡るのか、休む場所は、夜間は。過酷な旅にはまだ多くの謎が残る▼とりわけ不思議なのは、まるで天気図を読むかのように台風や低気圧を活用し、目指す先の花の茂り具合を知っているかのように渡りを始めることだという。長く研究を続ける医師の栗田昌裕さんはその著書で、気象を読むのではなく、巧みな直感で自然現象と一体となっている、と分析している▼自然の力を感じ取る-大昔の私たちの祖先も、多少はその能力を持っていたかも知れない。しかし道具を作り、知識を重ね、自然は制御できると思い込んで直感力を失ってしまった。度重なる自然災害はそのしっぺ返しなのだろうか▼熊本でもアサギマダラの寄り道の便りが届いている。まだ見ぬ南の島へ。厳しい道中だろうが、風に吹かれての旅はうらやましくもある。