JR肥薩線、豪雨被害の9割超「川線」 球磨川と平行、再建長期化も

熊本日日新聞 | 2021年02月01日 09:35

熊本豪雨で流されたJR肥薩線の球磨川第一橋梁を見つめる蓑崎厚子さん。川底では橋桁などの撤去作業が進められている=14日、八代市坂本町

 1月中旬、穏やかに流れる冬の球磨川に、巨大な鉄の構造物が横たわっていた。昨年7月の豪雨で流失した熊本県八代市坂本町のJR肥薩線球磨川第一橋梁[きょうりょう]と、約30キロ上流の球磨村渡にある同第二球磨川橋梁。どちらもJR九州が倒れた橋桁などの解体・撤去を進め、6月からの出水期までに作業を終える予定だ。

 あの日、第一橋梁の近くに住む蓑崎厚子さん(78)は、激流で橋が流される様子を自宅から目撃した。「まさか倒れるとは思わず、怖かった。自然の力でこんなになるものか」。鉄橋を渡る列車を眺めるのが楽しみだったといい、「早く元の姿に戻って」と再建を願う。

 豪雨災害で、肥薩線は八代-吉松(鹿児島県)の86・8キロにも及ぶ区間が不通となった。JR九州の青柳俊彦社長は「当社で過去最大級の被害」といい、復旧費は豊肥線をはじめとする熊本地震の際の総額約90億円を上回る可能性がある。

 中でも球磨川と平行し、「川線」と呼ばれる八代-人吉(51・8キロ)の被害は甚大。その象徴となった球磨川第一と第二球磨川の両橋梁は、明治以来100年以上にわたって幾多の水害に耐え、「点検や修繕も適切に行われていた」(国土交通省)という。

 ただ、河川施設の現行の構造基準には適合しておらず、いずれも想定される最大規模の洪水に対し、橋桁の高さが約2メートル不足していた。第一橋梁は4本ある橋脚の間隔の一部が基準より狭く、川の流れを阻害していた。

 構造上の懸念は現実となった。JR九州は、周辺の建物に残る水害の痕跡から「洪水は橋桁のレールの上まで達した」と分析。第一橋梁は橋脚の1本が根元から倒された。

 日本大の綱島均教授(鉄道工学)は「2本の鉄橋は想定していなかった流量にさらされた。トラス(骨組み)や橋脚に流木などが引っ掛かかって流れを妨げ、高まった水圧に耐えられなくなった」と推察する。

 肥薩線の被害は全体で450カ所に上り、その9割以上が「川線」で発生した。レールを支える道床や路盤が101カ所で損壊。線路への土砂流入も158カ所に上った。「河川の洪水による鉄道被害としては全国でも例を見ない規模だ」と綱島教授。

 同じく7月豪雨で一部不通になったJR久大線(久留米-大分)は、3月1日に全線再開する。長さ39メートルの鉄橋が流されたものの、別の路線で不要になった橋桁の再利用で早期復旧が可能になった。

 一方、球磨川第一橋梁は長さ205メートル、第二橋梁は179メートルと規模が大きく、損傷が激しい橋桁や橋脚は解体処分される。新しく造るには、国や県が検討中の新たな治水対策を踏まえて工法や経費を検討する必要がある。

 そのため、2本の鉄橋の架け替えだけでも「4、5年はかかる」とJR九州幹部。肥薩線の再建は、熊本地震から4年4カ月で全線復旧した豊肥線以上の長期戦が避けられない見通しだ。(福岡支社・宮崎達也、政経部・田上一平)

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