大学改革 安易な「選択と集中」禁物だ

1月23日 09:19

 現行制度では1大学しか運営できない国立大学法人の在り方が大きく変わりそうだ。文部科学省は大学運営の効率化による教育や研究分野での競争力強化を狙い、国立大学の「1法人複数大学方式」の導入を決定。この方式を盛り込んだ国立大学法人法改正案を通常国会に提出する方針だ。名古屋大と岐阜大は昨年末、運営法人を統合する基本合意を結んでおり、法案が成立すれば初の事例となる。

 背景には、18歳人口減少による大学経営の悪化予測がある。文科省によると、国内の18歳人口は第2次ベビーブーム世代が大学受験期にかかった1992年の205万人をピークに減少したが、2009年以降は120万人前後の横ばいで推移。しかし、18年以降は再び減少に転じ、40年には88万人にまで落ち込む。今後の進学率の上昇を見込んでも、同年の進学者数は現在の8割程度の約51万人にとどまる見通しだ。

 このため、中央教育審議会は昨年11月、各大学に将来的な適正規模の検討を要請する内容を盛り込んだ「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を文科相に答申。連携・統合の方法として▽国立大学法人が統合し、一つの法人傘下に複数の国立大を持つ▽私立大間の学部譲渡の促進▽国公私立の垣根を越えた「大学等連携推進法人」を設置し各大学の持ち味を生かしたグループ運営を展開-の3案を提示していた。

 名古屋大と岐阜大の法人統合はこの方向に沿ったもので、順調に進めば20年4月にも両大学を傘下に置き経営を担う新法人「東海国立大学機構」が誕生する。ほかにも「帯広畜産大と小樽商大、北見工大」「静岡大と浜松医科大」「奈良教育大と奈良女子大」が統合の検討に入っており、専門分野や地域性などを踏まえた再編がさらに進むとみられる。

 一方で、04年の国立大の法人化に伴って国は各大学に、科学研究費や民間資金などの獲得で自主財源を拡大するよう求め、教職員の人件費など国立大経営の土台となる国からの運営費交付金の総額は法人化の開始以降1割以上減った。その結果、教育・研究環境の悪化が指摘されている。

 さらに、19年度予算案では運営費交付金について、大学改革などを評価対象として交付金を傾斜配分する割合を現行の約3倍、全体の1割に当たる約1千億円に拡大する方針だ。これに対し、国立大学協会は「高等教育と研究の衰弱化、崩壊をもたらしかねない」とする反対声明を出した。

 18歳人口の減少が続く中、大学改革は避けて通れない課題だ。とはいえ、安易な形で「選択と集中」が進めば、経営基盤の弱い地方の国立大では存続に関わる事態になりかねない。

 大学改革が日本の研究力の低下を招き、社会の知的基盤を揺るがすようなことがあってはなるまい。AI(人工知能)など科学技術に世界がしのぎを削る中、大学に求められる役割の重みは増している。丁寧な政策論議を求めたい。