スルガ銀不正融資 金融行政の在り方問われる

9月9日 09:13

 シェアハウス投資を巡る不正融資問題で、スルガ銀行(静岡県)は、第三者委員会による調査報告書を公表した。元専務執行役員が主導し、相当数の行員が審査書類の改ざんや偽造などに関与。極端な法令順守意識の欠如とともに企業統治が機能不全に陥っていたことが明らかとなった。

 さらに報告書は、「企業風土の著しい劣化」と同行の経営体質にも厳しく切り込んだ。高い公共性と社会的責任が求められる銀行として、存在価値そのものが問われる事態だ。創業家出身の岡野光喜会長ら取締役5人が引責辞任したのは当然といえよう。

 同行を巡っては、創業家の関係企業に対する巨額融資も発覚している。同行は、社外監査役を中心とする調査委員会で辞任した会長らの法的責任を追及する方針だ。新経営陣はまず、顧客や地域の信頼を取り戻すことに最優先で取り組まなければならない。

 問題となったシェアハウス事業は、不動産業者が家賃収入を保証するなどして一般の会社員らを勧誘し、同行の融資を受けて物件を建てさせていた。通常ならどの程度の利益を生むのかという将来の事業性や、借り主の返済能力などを審査するが、同行は預金残高の水増しや審査書類の改ざんといった手法で過剰融資を実行。結果として入居低迷などからシェアハウスの運営は頓挫し、多額の借金を抱えるオーナーが続出した。

 不動産会社とつながり、個人向け融資で利益を稼ぎ出す同行の手法は当初、「スルガスキーム」などともてはやされた。しかし、営業部門トップが審査部門をどう喝し、不正融資の大半を承認させていた体制は尋常ではない。

 バブル崩壊による不良債権問題を機に、政府は銀行検査を厳格化してきた。ただ近年、低金利や人口減で銀行経営が厳しさを増す中、金融庁幹部も、同行を「モデル地銀」と語るなど、高評価を与えていた。結果として、組織ぐるみの不正を看過していた金融行政の在り方も厳しく問われるべきだ。

 今回の不祥事を受け、スルガ銀はこれまでにシェアハウス関連で717億円の貸倒引当金を計上した。金融庁は一部業務停止命令を検討しており、預金流出や業績悪化からの株価下落も懸念されている。経営立て直しは容易ではなかろうが、ゼロベースで事業を見直し、地域金融機関としての責任を果たしてもらいたい。

 シェアハウスなどの不動産投資向け融資に絡む不祥事は、スルガ銀以外でも表面化している。金融庁は近く全国の地銀を対象に実態調査に入る方針だが、銀行業界も法令順守の徹底など、自主的な対応に動くべきではないか。

 借り手よりも利益を重視する近視眼的な融資は、結果として自らに跳ね返る。多くの銀行がバブルで学んだ教訓のはずだ。一方の投資家側も、甘言につられて巨額投資に手を出せばどうなるか。金融商品のリスクと自己責任の重さを改めて認識したい。