高齢運転者の事故 免許返納促す環境整備を

6月1日 09:21

 高齢運転者による死亡事故が後を絶たない。28日には、神奈川県茅ケ崎市で90歳女性の運転する乗用車が赤信号で交差点に突っ込み、横断歩道を渡っていた4人をはね、うち1人が死亡した。

 逮捕された容疑者は、10年ほど前に膝を悪くし、買い物や通院のために車を週1、2回運転していたという。昨年12月に認知機能検査を受けたが問題はなく、今年3月に運転免許を更新していた。

 人ごとではない、と感じた人も多いのではないか。県内でも「買い物難民」「通院難民」と呼ばれる高齢者は増えている。免許を返納しようかと迷いながらも運転を続けている人は少なくあるまい。

 警察庁によると、昨年1年間に75歳以上の運転者が起こした死亡事故は418件。件数は横ばいだが、死亡事故そのものが減少傾向にあることを踏まえると事態は深刻さを増している。高齢化の進展に伴い免許を保有する高齢者は増える。社会全体で、自主返納を促しやすくする環境整備を急ぐべきだろう。

 改正道路交通法で高齢運転者への認知機能検査が強化されたのは昨年3月のことだ。検査で認知症の恐れがあると判断された場合は医師の診察が義務づけられた。昨年末までに約172万人が認知機能検査を受け、うち4万6千人以上が「認知症の恐れあり」と判定された。呼応するように免許の自主返納件数も急増している。それでも悲惨な事故が起き続けている現実を真剣に受け止めるべきだ。

 警察庁は、公共交通が充実していない地域で高齢者から生活の足を奪わないよう、運転できる地域や時間帯、車種を絞る「限定免許」や、決められたコースを自動運転で走る無人バスの導入なども検討している。ただ、対応は十分とは言い難い。自治体が公共交通の維持拡充に努め、それを国が支援する仕組みも欠かせない。バス停までの道のりを苦にする高齢者が多いことを考えれば、タクシーの積極活用も検討課題だろう。

 米配車大手のウーバー・テクノロジーズは先日、日本への本格進出の第1弾として今夏から兵庫県淡路島で事業を始めると発表した。タクシー会社に人工知能(AI)を活用した配車システムを有償提供し、客からの呼び出しに迅速に対応できるようにするという。訪日観光客のほか、地元の高齢者の需要も見込んでいる。

 ウーバー社は、自家用車を使って有料で客を運びたい人と客とを結び付けるサービスを武器に海外で急成長している。日本では「白タク行為」として原則禁止されている事業形態だが、過疎化が進む地方ならば、公共交通の有効な補完手段となる可能性もある。

 運転免許に定年制を設けることには高齢者からの異論も多い。返納すると社会と関わる機会が減ると懸念する声もある、だが、知恵を絞れば、高齢者が自ら運転しなくても生き生きと暮らせる仕組みを構築できるのではないか。最先端の技術や事業モデルも駆使して問題解決を急ぎたい。