強制不妊提訴 早期の救済は国の責務だ

5月20日 09:14

 旧優生保護法下で障害などを理由に不妊手術を強制されたとする北海道、宮城県、東京都の70代の男女3人が、国に損害賠償を求める訴訟を札幌、仙台、東京の各地裁に起こした。旧法を巡る国賠訴訟は1月に提訴した宮城県の60代女性に続く第2陣。謝罪・補償に応じない国の姿勢が問われることになる。

 ただ、4人とも手術が施されたのは1950~70年代で関連資料はほとんど残っておらず、被害立証が大きな壁。そのため「手術に関わった医師や施設の方に真実を語ってほしい」と要望している。さらに60代女性の訴訟で請求棄却を求めた国は「当時は合法」との立場を崩しておらず、旧法の違憲性と国の救済責任の有無が大きな争点になるとみられる。

 厚生労働省によると、旧法下で不妊手術を施された障害者は約2万5千人で、このうち強制されたのは約1万6500人に上る。「国策」によって重大な人権侵害がなされた事実は動かしがたく、優生思想に基づく障害者差別の解消を図る意味でも、国には早期の全容把握と救済へ動きだす社会的責務がある。

 48年施行の旧法は知的障害や精神疾患、遺伝性とされた疾患などを理由に、本人の同意がない不妊手術を認めていた。国の通知は身体拘束や麻酔使用のほか、だました上での手術も容認。96年に障害者差別や強制不妊手術に関する条文を削除した「母体保護法」に改定されているが、一連の訴訟で原告側は「法改定後も救済措置を怠った」として国の対応を厳しく批判している。

 同様の法律の下で不妊手術が行われたスウェーデンやドイツでは国が被害者に正式に謝罪し、補償を実施している。日本政府の消極的姿勢を「不作為」とみなすかも争点の一つだ。

 また、不法行為から20年が過ぎると損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」もハードルとなりそうだ。過去の戦後補償や公害訴訟では国がこれを盾にして争う事例があったが、2004年の筑豊じん肺訴訟の最高裁判決など、除斥期間の起算点を「加害行為の時期」ではなく「損害が発生した時」として救済範囲を広げたケースもある。

 今回の訴訟で原告側は、厚労相が旧法の問題点に触れた04年3月の国会答弁を重視。この時点で被害を認識したのに、救済措置策定に必要な合理的期間(3年)を過ぎても救済しなかったとして、起算点を07年3月と主張する意向を示している。

 27日には150~200人規模の全国被害者弁護団が結成され、救済の早期実現を求めるとともに原告をさらに募る方向だ。国会議員の間には、不妊手術に対する謝罪・補償の在り方を探る動きもあり、厚労省も初の全国調査に乗り出している。不妊手術を強いられた障害者には自らの意思を伝えられない人も少なくなく、高齢化も進んでいる。訴訟の結果にかかわらず全面的な救済を急ぐべきだ。