交通事故死 多角的な取り組み強化を

1月11日 09:14

 昨年1年間の全国の交通事故死者数は3694人で過去最少となった。最も多かった1970年に比べほぼ5分の1まで減少した。さまざまな対策が効果を発揮していると言えようが、多くのかけがえのない命が失われていることに変わりはない。交通安全教育の充実や悪質な違反の取り締まり、先端技術の活用など多角的な取り組みを一層強化したい。

 政府の中央交通安全対策会議は、2020年までに交通事故の年間死者数を2500人以下とする目標を掲げている。目標達成に向けて鍵を握るのは65歳以上の高齢者への対策だ。全体の死者数が減少傾向の中で、高齢者の死者数はほぼ横ばいが続き、相対的に割合が上昇している。ちなみに県内の昨年の死者は前年より6人多い73人で、6割が高齢者だった。

 警察庁によると、死亡事故は薄暮時間帯に多く発生。夜間も含め自動車対歩行者による事故の割合が高く、高齢歩行者が死亡する場合が多いという。事故を防ぐには、歩行者は反射材の着用、運転者には早めのライト点灯などが求められる。

 逆走やアクセルとブレーキの踏み間違いなどが原因となって、高齢者が過失の重い「第1当事者」になるケースも増えている。9日も群馬県前橋市で、85歳の男が運転する車に女子高生2人がはねられるという悲惨な事故が起きたばかりだ。高齢運転者に対しては、認知機能検査の強化や免許自主返納の促進などが必要になろう。

 昨年の飲酒による死亡事故は201件で、20年前と比べ約6分の1まで減少した。罰則強化が奏功したとみられるが、ここ数年は下げ止まり傾向にあり、根絶の難しさも浮き彫りになっている。加えて運転中のスマートフォン使用、急な割り込みなどの悪質運転といった、重大事故につながる新たな問題も浮上している。

 内閣府が18歳以上を対象として実施した昨年の調査で、車を運転中にスマートフォンや携帯電話を使用した経験がある人は13・0%に上った。信号待ちなど停車中も含めると36・5%にもなる。

 運転中にスマートフォンや携帯電話を使用したことが原因となった交通事故は、一昨年1999件発生し、うち27件が死亡事故だった。事故の引き金になることを改めて肝に銘じたい。

 昨年は、東名高速道路で車の進路をふさがれて無理やり停止させられた夫婦が追突されて死亡。自分が注意していても事故に巻き込まれる可能性がある悪質運転が社会問題になった。警察庁は、悪質なドライバーについての取り締まりを強化するよう全国の警察に指導した。「後方からの追い上げ」や「蛇行運転」「幅寄せ」などをする車と出くわしても相手にせず、冷静に対応する必要がある。

 ドライバーの不注意や高齢運転者の身体機能の低下に伴う交通事故への対策として、運転者の危険認知の遅れや運転操作の誤りによる事故を未然に防ぐための先端技術の開発、普及にも期待したい。