慰安婦問題検証 政府間合意の意味は重い

1月9日 09:18

 旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡る2015年12月の日韓の政府間合意について、韓国政府の作業部会が昨年末、検証結果を発表した。交渉過程での韓国側の取り組みについて、被害者である元慰安婦との意思疎通が「相当に不足していた」と指摘。文在寅[ムンジェイン]大統領も合意に向けた対日交渉に「重大な欠陥があることが確認された」と表明した。

 報告書は、対日交渉が朴槿恵[パククネ]前大統領周辺によって主導され、核心部分について秘密裏に進められたなどとして、朴政権の外交の稚拙さを強調した。要するに元慰安婦らに事前の根回しが不足していたということで、韓国外交の課題も浮き彫りにしたといえる。

 文大統領は合意について語る際、「国民の大多数に受け入れられていない」と繰り返してきた。しかし、これは日本との合意を導き出す外交交渉で「失敗しました」と言っているに等しく、為政者として責任感に欠ける。

 文政権としては、交渉が朴政権下で被害者の頭越しに進められたとの批判が根強い国内世論のガス抜きを図る狙いもあろう。しかし関係者の反発が一層強まり、かえって着地点が見いだせなくなるのではないか。

 早速、日韓合意に基づき設立された元慰安婦の支援に当たる財団で動きが見られた。昨年末、理事5人が辞表を提出。日韓関係に精通した専門家が不在になる公算が大きくなった。韓国メディアは解散の可能性さえ報じている。

 日韓合意を振り返れば、日本が政府の責任を認めて、その財団に10億円を拠出。一方、韓国はソウルの日本大使館前にある慰安婦少女像の問題解決に努力する、とした。日本は合意を履行したが、少女像は撤去されないままで、16年12月には釜山の日本総領事館前にも設置された。

 複数の韓国メディアは8日、文政権が新たに日本政府に対し「責任ある措置」を求める方針を決めたと報じた。韓国外務省は、日韓合意をどう扱うかについての新方針を9日午後に康[カン]京和[ギョンファ]外相が発表することにしている。しかし、日韓両首脳が内容と意義を互いに確認した政府間合意の意味は重い。両国で「最終的かつ不可逆的な解決」を図ると確認した以上、韓国政府がやるべきは合意に反対する関係者や団体の説得を本格化させることだ。

 日韓は今年、当時の小渕恵三首相と金大中[キムデジュン]大統領がまとめた「日韓パートナーシップ宣言」から20年の節目である。未来志向的な関係を目指す趣旨だったが、慰安婦問題をはじめ両国にまたがる懸案はなかなか解決できず、関係修復の糸口を見いだせていない。

 文政権の出方次第では日韓関係が一層、冷却化しかねない。とはいえ核・ミサイル開発を強行する北朝鮮に対峙[たいじ]するには緊密な連携が欠かせない。過去の問題を簡単に水に流せないのは分かるが、国民世論や感情を刺激せず、冷静にコントロールする政治手腕を韓国側に求めたい。