自民の改憲論点 まず「何のために」からだ

12月24日 09:07

 自民党の憲法改正推進本部は、改憲を目指す4項目について論点をまとめた。焦点の9条に関しては、戦争放棄の1項と戦力不保持などを定めた2項を維持したまま自衛隊を憲法に明記する加憲案と、2項を削除して自衛隊の目的・性格をより明確化する案を併記した。

 安倍晋三首相(自民党総裁)が5月に提起した加憲案への反対論が根強く、2012年に決めた党改憲草案に沿った案も残して絞り込みを先延ばしにした。各党との議論の余地を残す狙いもあろう。

 自民党は年明け以降、改憲に理解を示す政党を議論に巻き込みたい考えだ。首相も「与野党を問わず具体的な案を持ち寄って、衆参両院の憲法審査会で議論を深めていただきたい」と呼び掛けている。自民党は来年の通常国会への党改憲案提出に向けて議論を進め、早ければ同年中の国会発議を目指す構えだが、まずは党内で意見集約を図る丁寧な議論を尽くすべきだろう。

 首相は加憲案について「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と強調する。しかし、自衛隊という文言を明記すれば戦力不保持の2項は死文化し、集団的自衛権行使の全面的な容認につながる恐れがあるとの指摘もある。憲法に新たな解釈論争を持ち込むことにもつながりかねず、冷静に議論を重ねる必要がある。

 大規模災害など緊急事態への対応に関しても、自民党の意見は集約されていない。「論点まとめ」には、国会議員の任期の延長を認める案と、政府への権限集中や私権制限を含めた本格的な緊急事態条項を新設する案が併記された。

 一方、参院選の合区解消に関する意見集約は、幅広い論点への配慮を欠いている。

 自民党は、国会議員の選挙について「法律で定める」とする47条を改め、参院選では改選ごとに各都道府県から1人以上選出できると規定する方向で意見はおおむね一致したとする。ただ参院に都道府県代表の性格を持たせるのならば、「両議院は全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定めた43条の規定との整合性はどうなるのか。衆参両院の関係も見直すべきではないか。

 教育無償化に関しては、「無償化」を明記せず「国が教育環境の整備を不断に推進すべき」との趣旨を新たに盛り込むとした。だが、努力規定ならばあえて憲法を改正する必要性は乏しい。

 首相は最近の講演で「20年を日本が生まれ変わる年にしたい。新時代の幕開けに向け憲法の議論を深めたい」と述べた。しかし、共同通信社が今月上旬に実施した世論調査では、安倍首相の下での憲法改正に「賛成」との意見は36・0%で、「反対」の48・6%を下回っている。

 どんな改正なら可能なのかという議論を急ぐあまり、何のために改正が必要か、という大前提が置き去りにされてはいないか。スケジュールありきではなく、腰を落ち着けた議論を求めたい。