社会保障への不安 負担と給付、本質的議論を

10月24日 08:16

 医療や年金などの社会保障制度について、「安心できない」「あまり安心できない」と感じている人が83%に上ることが、日本世論調査会の全国調査で明らかになった。急速な少子高齢化による支え手の減少や、社会保障費の増加が理由の上位に挙がっている。

 国の社会保障制度改革が遅々として進まず、国民の不安がこれまで以上に高まったと言える。安倍晋三前政権は「最大のチャレンジ」として全世代型社会保障制度を打ち上げ、財源確保のため消費税の増税まで実施したが、国民の痛みを伴う「負担と給付」の見直しについては避けたままだった。菅義偉政権は改革の本丸に踏みこみ、安心して暮らせる制度の将来像を国民に示すべきだ。

 2019年に生まれた子どもの数は約86万人で、統計を開始した1899年以降最少となった。一方で、65歳以上は前年比30万人増の3617万人で過去最多を更新、総人口に占める割合も28・7%で過去最高となった。20年版厚生労働白書によれば、出生数は40年には74万人となり、65歳以上の割合も35・3%に達する見通しという。国民が不安に感じるのも当然のことだ。

 19年度の医療費の概算は前年度から約1兆円増え、過去最高の43兆6千億円に達した。熊本県は7034億円。訪問医療なども含む県民1人当たりの医療費は年間約39万円と全国で7番目に高く、増加傾向が続いている。

 社会保障制度改革の最大の焦点は、75歳以上の医療費負担の1割から2割への引き上げだ。政府は22年度までに引き上げる方針を決めており、年収240万円以上で383万円未満の人を対象とする案が浮上している。約190万人の負担が増えることになる。

 先日、菅政権では初めてとなる政府の全世代型社会保障検討会議が開かれたが、不妊治療支援や男性育休の取得促進、待機児童解消といった現役世代向けの少子化対策が主なテーマだった。いずれも世論の支持を得やすく、改革姿勢を訴えるのにうってつけ、との思惑も働いているのだろう。

 医療費負担引き上げの線引きは与党や医療団体にも異論があり、政府は水面下で調整を図っている。とはいえ、年末を見込む制度改革の最終報告まで2カ月しかない。26日召集の臨時国会で本質的な議論を急ぐべきだ。

 少子化対策では、雇用労働者の4割近くにまで増えた非正規労働者が経済的理由で結婚や出産をためらわないよう処遇改善を図ることも早急に進めるべきだ。昨年10月に始まった幼児教育・保育の無償化は、消費税増税の増収分の一部を使途変更して財源としたが予算不足となり、年度途中に発行した赤字国債で穴埋めしたことも記憶に新しい。結果的に子どもたちの世代につけが回るような政策では本末転倒だ。

 衆院選まで1年を切ったが、痛みを伴う問題の議論を後回しにすべきではない。政府は逃げずに正面から向き合ってもらいたい。