伊方原発再差し止め 受け止めるべき疑問符だ

1月19日 09:23

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を求めて、50キロ圏内に住む山口県東部の住民が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転を認めない決定を出した。2017年にも同高裁が運転差し止めを決定しており、再度の「待った」をかけた形だ。

 高裁は「四国電力の地震や火山リスクに対する評価や調査は不十分」とし、安全性に問題がないとした原子力規制委員会の判断は誤りと指摘した。安全性の確保に重ねて疑問符を突きつけた司法判断を、行政と規制委、そして電力会社は重く受け止めるべきだ。

 今回の主な争点は、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)や、約130キロ離れた阿蘇カルデラの火山リスクの評価が妥当かどうかだった。

 四国電力は、海上音波探査を基に、佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価は必要ないとした。規制委もこれを認めた。しかし、高裁は「敷地2キロ以内にある中央構造線が横ずれ断層である可能性は否定できない」と指摘。調査は不十分だとした。

 火山噴火の影響では、規制委が安全性審査のため策定した「火山影響評価ガイド」に基づき、阿蘇の噴火リスクが焦点となった。

 高裁は、数万年前に起きた「破局的噴火」に至らない最大規模の噴火であっても、火山灰などの噴出量は四国電力の想定の3~5倍に上り、火山灰量の想定が過小と指摘。四国電力は十分な調査をしないまま原子炉設置変更許可申請をし、安全性の審査にあたって「問題はない」とした規制委の判断には「過誤や欠落があった」と断じた。

 伊方原発は細長い佐田岬半島の付け根に位置し、重大事故時には半島の先端側の住民が孤立する恐れがある。南海トラフ巨大地震の震源域にも入っている。

 それゆえに安全性を厳しく問うたとも受け止められるが、広島高裁は、新規制基準の火山影響評価ガイドそのものについても、「噴火の時期や程度が相当前の時点で予測できるとする部分は不合理である」と批判している。

 これらの指摘は、伊方同様に阿蘇噴火の影響が考えられる玄海、川内という九州電力管内の原発も抱えるリスクである。

 政府は、「世界一厳しい」とする規制委の審査合格を世論を納得させる切り札とし、伊方3号機を含む5原発9基の再稼働を実現してきた。しかし、その審査内容や規制基準に穴があるとなっては、再稼働に前向きな原発行政は根本から揺らぐ。再稼働済みや審査中の他の原発にも、不信の目が向けられるのは必至だろう。

 四国電力は決定を不服として、異議申し立てをする方針。規制委も「新規制基準は最新の知見に基づき、審査も適切」と反発しているが、司法が再度にわたり提起した疑問符を軽視してはならない。少なくとも、規制基準や事故対策は不断の見直しを行うべきだ。