自衛隊中東派遣 なし崩し的拡大が心配だ

10月22日 07:13

 安倍晋三首相は、国家安全保障会議(NSC)会合で、中東を航行する日本船舶の安全確保のため、自衛隊の派遣を本格的に検討するよう関係閣僚に指示した。

 首相は、これまでのトランプ米大統領やイラン首脳との会談で、対話による中東の緊張緩和に尽力すると強調してきた。軍事的側面の強い自衛隊派遣に踏み出せば、大きな外交方針の転換と言える。首相は自衛隊派遣の必要性について、国民に説明を尽くす必要がある。

 中東では今年6月、日本が輸入する原油の約8割が通過し、エネルギー供給の生命線とも言えるイラン沖のホルムズ海峡付近で、日本の海運会社が運航するタンカーが何者かに攻撃される事件が発生するなど、情勢が悪化している。

 トランプ氏は「自国の船舶は自国で守るべきだ」と日本などに対応を要求。米国主導の有志連合構想への参加を求めている。しかし、日本政府は、有志連合には参加せず、イランが戦略上重視するホルムズ海峡を避けて自衛隊を独自に派遣する方針だ。

 事実上のイラン包囲網の意味合いを持つ有志連合に参加すれば、日本が長年築いてきたイランとの友好関係にひびが入りかねない。政府方針は、米国の要求に対応しながらイランとの対立を回避する「苦肉の策」と言える。

 とは言うものの、日本の方針に米国やイランが納得するか定かではない。政府は引き続き、外交努力を続けるべきだろう。

 6月の事件以降、日本の船舶が狙われる事案は発生していない。ホルムズ海峡を活動地域としないのであれば、今なぜ自衛隊派遣を決めなければならない緊急性があるのか、疑問が残る。

 中東情勢は、イランやイスラエル、サウジアラビア、シリアなどの利害関係が複雑に絡んで混沌としており、自衛隊が派遣先で不測の事態に巻き込まれるリスクもある。

 自衛隊の派遣が、本当に自国船舶の安全確保や、中東情勢の安定化に寄与するのか。政府は、国民の疑問に答えられるよう具体的な活動内容を定め、説明責任を果たしてもらいたい。

 政府は、派遣の根拠として、自衛隊法に基づく「海上警備行動」や、海賊対処法に基づく「海賊対処行動」などを検討してきたが、いずれも適用のケースには当たらないと判断。結局、菅義偉官房長官は、その根拠を防衛省設置法の「調査・研究」と説明した。

 ただ、「調査・研究」での活動には限界がある。タンカー攻撃などの事態が発生した場合、どう対応するのか明確ではない。国会承認を必要としないため、政府独自の判断で自衛隊の活動が広がる恐れがあり、そうした事例が続けばなし崩し的に自衛隊の海外派遣が拡大する懸念も拭えない。

 情勢が緊迫化し、不測の事態も起こり得る中東への自衛隊派遣という重要な判断に、国会の関与がなくていいのか。国会での歯止めの議論が必要だ。