消費税増税 責任ある言葉で将来像を

7月11日 09:17

 10月からの消費税率10%への引き上げを巡り、予定通りの実施を目指す与党と、反対・凍結を訴える野党の主張が真っ向から対立。参院選の主要争点となっている。

 政府は、増税できる経済環境が続くと判断。さらに増税に伴う景気の下振れを防ぐため、軽減税率やキャッシュレス決済でのポイント還元、子育て世帯など向けのプレミアム付き商品券、住宅ローン減税の拡充など、本年度予算に巨額の負担軽減対策費を計上した。また、全世代型社会保障の構築の一環として、増収分の一部を教育・保育の無償化に振り向けることにしている。

 増税に伴う家計の負担を極力抑えようとする意図が理解できないわけではない。ただ、対策は詰め込み過ぎの印象が拭えず、財政支出に見合う効果があるのかも疑問だ。社会保障制度の安定化を図るため、増税によって歳入を増やし財政再建を進める、消費税増税本来の目的が薄まる懸念もある。

 安倍晋三首相(自民党総裁)は、公示直前の3日に行われた日本記者クラブでの党首討論で、2018年度の税収がバブル期を超えて過去最高の60兆円超となったと政権運営の成果を強調。今後10年程度は消費税を引き上げる必要はないとの認識を示した。

 しかし、税収が過去最高となっても国の一般会計予算100兆円のうち、必要額の6割しか賄えていない現状は異常と言わざるを得ない。歳入不足を補う国債を発行して帳尻を合わせ続けた結果、国と地方の長期債務残高は19年度末に1122兆円となる見通しだ。

 利払い費が一般政策経費を圧迫する中、今後10年の間にも高齢化と社会保障関係費の増大は避けられない。首相は財政再建の道筋もきちんと有権者に示すべきだ。

 一方、野党は景気への悪影響が懸念されるとして、家計を直撃する消費税増税を実施しない代わりに、大企業や富裕層向けの課税を強化する必要性を訴えている。余裕があるところにより多くの負担を求めるという考えだろう。

 しかし、税負担が重くなり過ぎれば企業の競争力が減退し、雇用や賃金に影響が出ることも懸念されよう。また、高額所得者の所得税率を引き上げれば、個人の能力や努力の成果が反映されず、経済のダイナミズムが失われることにもなりかねない。

 こうした課題を克服し、どうやって安定した財源を確保するのか。有権者が判断できるよう、野党には課税対象や税率など現実に即した詳細な説明を求めたい。

 老後資金2千万円問題で公的年金に対する不安や不満が広がり、社会保障制度を支える財政基盤も揺らいでいる。景気への悪影響を避けつつ、財政再建を着実に進め、かつ持続可能な社会保障制度を次世代に引き継ぐためにはどうすべきか。与野党は、負担増を伴う痛みに正面から向き合い、責任を持った将来像を示して、議論を戦わせてもらいたい。