4月23日付

4月23日 08:58

 詩人の吉野弘さんは漢字を題材にした詩を多く残した。その中の「過」という作品はこう始まる。<日々を過ごす/日々を過[あやま]つ/二つは/一つことか/生きることは/そのまま過ちであるかもしれない日々>▼ある程度の年齢を重ねた人には、胸に染み入る言葉ではなかろうか。何の過ちも犯さず完璧な人生を送る人など、そうはいないはずだ。とはいえ、他人を巻き込む過ちは、時に取り返しのつかない悲劇を生む▼東京・池袋で先日、それが起きた。白昼、87歳の男性が運転する車が暴走。通行人を次々とはね、自転車で横断歩道を渡っていた31歳の母親と3歳女児が亡くなった▼車が猛スピードで横断歩道に突っ込む瞬間を防犯カメラが捉えていた。男性は「アクセルが戻らなくなった」と説明したというが、ガードパイプに接触したことで動転し、アクセルを踏み続けた可能性がある。男性を逮捕せず、任意で捜査するという警視庁の対応にも疑問が残る▼何の落ち度もないのに突然命を奪われた母子の無念、遺族の悲痛を思えば胸がつぶれる。周囲が男性の運転をやめさせてさえいれば、と思っていたら、またもや信じられない事故が起きた。神戸の中心部で市営バスが横断歩道に突っ込み、若者2人が犠牲となった。運転手はまだ64歳で、しかもプロである。一体なぜなのか▼黄色い帽子をかぶり、大きなランドセルを背負った新入生が、慣れない通学路を登下校する時期だ。車は運転者次第で簡単に凶器と化す。そのことを忘れてはなるまい。