9月9日付

9月9日 09:01

 <他人おそろしやみ夜はこわい/親と月夜はいつもよい>。かつて奉公に出た少女たちが、口ずさんできた子守歌という▼初めて親元を離れ接する他人が恐ろしく感じられるように、暗がりから何が現れるか分からぬやみ夜は心もとない。その不安を解消するために工夫を凝らしてきたのが灯火の歴史だった-と、民俗学者の柳田国男が解説している(『火の昔』)▼「夜が真っ暗で怖かった」。一昨日の本紙夕刊で、札幌市の少女の言葉が紹介されていた。地震の影響で北海道全域に及んだ大規模停電。きのうの段階でほぼ解消されたようだが、完全復旧には足りず、計画停電も準備されている。残念ながら小さな胸を痛めたやみ夜の不安は、まだしばらく尾を引きそうだ▼引き金となったのは、道内電力需要の半分程度を賄っていた苫東厚真火力発電所の損壊と緊急停止だった。需要と供給のバランスが大きく崩れた結果、他の発電所も連鎖して一斉にダウンしたのだという▼エネルギー供給を分散させず、大規模施設に頼ることのリスクは東日本大震災でも指摘されていた。効率を追求した現代の灯火が、実は不安解消の工夫が足りないもろさと背中合わせであることを、改めて思い知らされた形だ▼こうした一本の大きな柱だけで支えられた多様性のないシステムは、あらゆる分野で首都圏一極集中が進む日本の現状と重なりはしないか。それに加えて、大勢は決まったという自民党総裁選の中、「安倍1強」という言葉も、ちらりと頭をかすめる。