11月22日付

11月22日 08:25

 夜間公開されている熊本城を訪ねて、石垣の美しさに息をのんだ。石積みや櫓[やぐら]の一群はもともと白と黒のモノトーンの世界。ライトアップとの相性は良いのだろうが、光と影の演出にこれほど映えるとは。夜のキャンバスに、壮大な直線と曲線の美が描かれている▼熊本生まれの身に城内は珍しいものではない。けれども今度のような眺めは、初めてのスペクタクルだった。熊本地震からの復興を広く見てもらうために造られた高架の見学通路からの見晴らし。しかもめったにない夜景だからだ▼夜間公開はお城まつりに合わせたもので、12月6日までのわずか2週間しかない。石垣を見下ろせる見学通路は、今後約20年間は維持される予定だが、いずれ撤去される。せっかく手に入れた「眺望」を手放すのは、もったいない。新たな観光の目玉にできないか▼などと考えてもみたが、やはりあり得ない話だ。お城一帯は国の特別史跡でもある。観光客を呼びたいからといって、無二の財産を安易に「テーマパーク」にしてしまうわけにはいかない▼夏の空に一瞬だけ輝く花火、春の数日だけ咲き誇る桜。夜の熊本城の姿もそのように、長い歴史の一幕の美として楽しめばよいのだろう。ただ、せめてクリスマスくらいまで夜間公開を延長してみてはいかがか▼それにつけてもコロナ禍さえなければもっと大勢の旅行者に夜のお城の散策を楽しんでもらえたのに。こんな時こそ映像をせっせとSNSで拡散させ、世界中の人たちに美しい雄姿を見てもらおう。