8月21日付

8月21日 06:56

 夏の終わりに打ち上げられる花火にはどこかもの寂しさが伴う。大輪の花のような煌[きら]めきと瞬く間に消えゆく光の雫[しずく]。余情や郷愁だけではない。芥川龍之介の短編小説「舞踏会」に次の一節がある。「我々の生(ヴイ)のやうな花火」。こう語ったフランス人将校は、人生の儚[はかな]さを花火に重ねたのだろう▼夏の風物詩である花火だが、お隣の韓国では秋に大きな大会を開くのが恒例だ。11月にある釜山[プサン]世界花火大会もその一つ。距離が近い九州からは高速船を利用したツアーなどが計画され、例年は花火見物がてら、海を渡った日本人も少なくないようだ▼しかし、今年はどうだろう。心配なニュースが連日絶えない。JR九州によると、お盆期間中の博多と釜山を結ぶ高速船の利用状況は昨年からほぼ半減。韓国人観光客が約7割減と大きく落ち込んだという▼影響は空の便にも広がっている。昨日は、大韓航空が日本と韓国を結ぶ路線を大幅に見直し、運航休止や運航取りやめを行うというニュースが飛び込んできた▼県内でも韓国の格安航空会社(LCC)が熊本とソウル、大邱[テグ]を結ぶ2路線の運航を休止した。別のLCCも熊本-ソウル線を10月下旬から運休する計画で熊本発着の定期路線は全てなくなる可能性がある▼日韓関係は戦後最悪の状況と言われ、反日、嫌韓感情もかつてない高まりをみせる。花火にまつわる季語であれば、距離を感じさせる「遠花火」と言った関係か。「近くて遠い国」をほうふつとさせる、寂しい響きの言葉である。