7月21日付

7月21日 07:32

 〈人民の、人民による、人民のための政治を-〉。第16代米大統領エイブラハム・リンカーンのこの有名な言葉は、南北戦争の戦没者墓地での「ゲティスバーグの演説」で紡がれた▼わずか2分ほどの短い演説は、国がよって立つ自由と平等、そして民主主義の原則をうたっている。奴隷解放を宣言し、内戦による国家分断の危機も乗り越えたリンカーンの業績と相まって、米国史上最も重要な演説の一つに数えられる▼この自由と人種融和を尊んできた歴史を踏みにじる許し難い言動である。トランプ大統領が非白人女性議員に「国に帰れ」「出て行ったらいい」と言い放った。下院から人種差別的と非難決議を突きつけられ、各国首脳からも指弾されている▼分断や憎悪をあおるような発言を繰り返すトランプ氏には、人としての良識さえも疑われよう。集会では熱狂した支持者が「送り返せ」の大合唱で賛同を表したという。この国の人種差別の根深さと対立が深化していく怖さを禁じ得ない▼さて、太平洋を挟んだ日本では、きのうで参院選の舌戦が止んだ。政党の中傷合戦には毎度うんざりさせられるが、かの国のように国民が分断されるようなことになっていないのは救いか。無用な争いを避けるためにも人の主張には冷静に耳を傾けたいものだ▼リンカーンは、「投票は銃弾よりも強い」という言葉も残した。政治の暴走を防ぎ安定した社会を築く武器は、有権者の冷静な目と行動にほかならない。きょうはそのための1票を投じる日である。